演 目
グリーンコーポの女
観劇日時/05.6.26
劇団/劇団パズル
公演回数/旗揚げ公演
原案/竹内渚
作・演出・舞台監督/櫻井彩望
照明/福踊沙由里
音響/渡邊拓也
劇場/マルチスペースF


古風な風俗劇

 朝、共同トイレに列を作って順番を待っている若い女たち、という今どき考えられないような超貧乏な築80年みたいな下宿屋、ここに巣食う、若いだけで金のない、夢だけを持って生きている四人の女。(関野理恵・安藤真利子・沢口優・小田島奈々)彼女らとそれほど歳の違わない家主の女(=田尾桂子)。
自分勝手で諍いの絶えない四人、だが、彼女らの行く末を暖かく見守って自分の夢を諦めた女家主。
いまどき途轍もなく珍しく古風な話。20歳前後の若い女性達がこんな話を考えてそれを舞台化したということに、一種のカルチャーショックを受けた。おそらくこの中の誰かがこういうシチュエーションを考え出し、他のメンバーたちがそれを受け入れたのであろう。
家主の真意を知った四人の女たちは、それぞれステップアップを目指して次の世界へと進んでいく。残った女家主の元には次の世代の夢を抱く人たち(竹内渚・櫻井彩望)が、相変わらず朝のトイレに順番待ちの列を作り、それを微笑んで眺めている家主のところへ先の四人がそれぞれのささやかな抱負を語って集まってくる。
表現技術は稚拙だが、この50年前の中間風俗小説、これも懐かしいカテゴリーで、僕も『オール読み物』や『小説新潮』などのエンターテインメントを愛読した記憶があるが、そういう一種の人情話を、何か懐かしい古い世界を見たような気がして楽しんだ。
これを観た若い人たちの感想が聞きたいという切実な思いがあった。
最近、この「マルチスペースF」という小空間が、若いアマチュァのビジター集団によって利用されることが多いが、狭くて不便な、それだけにきっと使用料が安いのだろうが、このスペースから何かが生まれてくることを期待したい。