演 目
禁 色
観劇日時/05.6.8
原作/三島由紀夫
構成・演出・振付/伊藤キム
出演/白井剛・伊藤キム
劇場/世田谷パブリックシアター

新しい時代の暗黒舞踏

 1959年、土方巽=演出・大野慶人=共演により初演され、これを契機に「暗黒舞踏」が創始されたともいわれている伝説の舞台の05年版であるという宣伝……
さすがに洗練された気分の良い舞台である。暗黒舞踏もこういう形で熟成したのかと感じ入る。
いきなり二人の男が一糸まとわぬ全裸で登場し、精力的に踊るが、それは男同士の愛情を象徴している舞踏ではあるけれども、決して卑猥な感じや薄汚いイメージはない。体毛を剃っているせいか、生々しい匂いがなく、まるで人形のような感じだ。すこし遠くの席から観たせいかもしれないが……
上・下・奥と三方を舞台高一杯に白い壁で囲った無機質な感覚も強く影響したのかもしれないけれども、まるで操り人形が飛び跳ねているようだ。
ひとしきり激しいデユエットダンスが終わると、照明が変わり、二人は舞台上で衣服を着用、それは開襟シャツでノーネクタイながら、まるでホストのような出で立ち。しかしそれもやはりいやらしさはなく、清潔で健康な感じ、ダンディな男の感性……
そしてそれからは時に激しく時にたっぷりと、情感豊かにまたコミカルに2時間を踊りぬく。ただしときどき交替してソロになるわけで、そうでなければエネルギーが持たないであろう。
さすがに物語性が薄いから2時間の長丁場は少しもたれるようだった。
麿赤児風のドロドロとした暗黒舞踏とはまったく違う予想外の舞台には驚いたけど、それとまったく矛盾するが、この清潔さ無機質さに物足りなさを感じるのもまた事実なのだ。