演 目
戦場のピクニク・コンダクタ
観劇日時/05.6.6
劇団名/流山児事務所
公演回数/創立20周年記念公演ファイナル
作/坂手洋二
演出/流山児祥
音楽・演奏/Yennu Ariendra(インドネシア)
  〃  /KONTA
振付/北村真美
演奏/Muhammad Arif Purwanto(インドネシア)
衣装/羊屋白玉
舞台美術/水谷雄司
照明/沖野隆一
音響/島猛
制作/米山恭子
劇場/下北沢・本多劇場

観念的な図式劇

 アラバールの『戦場のピクニック』をモチーフとして坂手洋二が書いた、『「戦争の時代」の家族の物語を音楽劇として再構成』した『壮大なる寓話風「社会風刺劇」』というチラシの惹句である。
話が拡散して、しかも抽象的なので、戦争とか家族の物語とかのインパクトは弱く、音楽劇・舞踊劇としての生き生きとしたイメージからはむしろ遠い感じがする。
戦場に指揮者が必要なのは当然だし、もっといえば独裁者を暗示しているのかもしれない。音のない日がくるというのも情報制限や言論統制のことであろうと想像できるし、芸術家である指揮者を軍隊の指揮官に例えるのも皮肉な見方だ。
舞台中央に巨大な枯れ木があって、その頂上にある大きな洞穴に人々が昇り降りしているが、それが何を意味するのか? アフタートークで、ある観客の質問に対して、出演者の美加里が、「自宅近所の公園にある老木をイメージした。その木に初めて会ったとき、枯死寸前の感じがしたが、翌春、若々しい芽葉が出ていた。」と答えた。
これは良い感性だと思った。つまりこの古木に生と死とを象徴させているわけだ。しかしそれを芝居の中ではなくアフタートークを聞いて分かる自分も情けない。ただ、他の出演者もほとんどが、「ただの枯れ木」としか答えなかったのだから……
美加里に期待していたのだが、その切れ味の良さ、集中力の凄さはまったく感じられず、儚い美少女というイメージしかなく期待を裏切った。この人の持ち味がもったいない使い方だ。