演 目
薔薇十字団渋谷組
観劇日時/05.6.4
劇団名/劇工舎ルート
公演回数/札幌公演
作/清水邦夫
演出・照明/伊藤裕幸
舞台美術/田村明美
音響効果/高田光江
制作/加藤亜紀・高田学
劇場/シアターZOO

蘇りへの痛切な叫び

 北野通・35歳(=飯田慎治)、すべての肉親を失った孤独な男の、生と死の幻影の交錯に見え隠れする哀愁と蘇りへの叫びの切なさ。
やはり戯曲の良さがしみじみと感じられる。笑わそうと思っているはずはないのに、思わず笑ってしまう台詞のリアリティ。
前半やや緊張気味でカッタルく、肩肘張った感じだが、後半に入って二人の心情が出てくる。それぞれの生に対する再挑戦のエネルギー。
その芝居としての面白さを十二分に了解した上での、あえていくつかの減点要素を……
女(=田村明美)は透明感が希薄で、生々しく生臭い現実感が煩わしい。この女のヴァイタリティが男に及ぼすエネルギィの源泉なのだとは思うが、逆に男の幻想に浮かび上がる生活感のない存在が観たかったと思うのは僕の偏見だろうか?
たくさん集められた電気スタンドは、室内の場面では物語によくマッチした形のものが並べられて、それは見事なものだが、ラストシーンの壁面を透かして見える電気スタンドの扱いがいささか無神経ではないのか。
選び方には、室内の場面と同じようにずいぶん考えられたようだが、電源が生のままに見えたり、奥行きが浅すぎて深みが感じられずに興を削ぐ。ここはやはり遠くまで深々と、墓場のように電気スタンドの行列が見遥かせる光景が欲しかった。
BGMの選曲は良いのだけども、操作が粗雑過ぎる。尻切れトンボになったり、大きすぎて台詞が聞こえなくなったり……
全体に丁寧な造りであるだけに、ところどころに垣間見える微細な齟齬が非常に気になるのだ。