演 目
Ein Altes Haus(アイン アルテス ハウス)〜棲家〜
観劇日時/05.5.11
劇団名/Theater・ラグ・203
公演回数/Wednesday Theater V0l.15
作・演出/村松幹男
音楽/今井大蛇丸
音響オペ/瀬戸睦代
照明オペ/鈴木亮介
劇場/ラグリグラ劇場

様式化された血の怨慕

 没落した資産家の遺児・三姉妹(長女=ゆみこ・次女=伊藤千絵(客演)・三女=坂井秋絵)。その忠実な執事の若い男=平井伸之。設定からみて時代は多分、昭和初期。この資産家と執事一家との複雑怪奇な血縁関係が暴かれていく。ほとんどホラーっぽい物語の展開だ。
この血縁の複雑さが、両家を悲劇に追い込み、生き残った者たちはすでに行方不明、ただ一人残った執事はこの古い怨念の篭もった屋敷を売却する。自分が生き続ける限り、この屋敷を自分が管理することを唯一の条件として……
三姉妹と執事との1時間に亘って繰り広げられた物語は、おそらくこの執事にとって幸せだった思い出であり、ただ一つの生きていたことの証しであったのか……
昭和初期の資産家一族とその執事一家との物語ではあるが、そこには何時の時代にも通じる人間の逃れられない宿命の怖さというものが語られているようだ。
我欲でもなく我執でもなく、宿命に翻弄された弱い人間たちの落ち込んでいく悲劇が描かれる。唯一の悪人は話の中に出てくる、この二家族を破滅に導いた執事の兄だけであろうが、それだって才能と力量のあるその男に頼らざるを得なかった二家族の悲劇であったのだろうか……
こういう話を人工的に構成された、つまり様式性の強い演出と演技で表現した。これは『折り紙』にも共通する特徴であり、この方式に拒否反応を示す観客があることは予想される。
だが僕は、話といい表現形式といい、この多様性と通俗性の奥にあるものに挑戦していくラグの姿勢に、大きな期待をもつ一人なのだ。