演 目 折り紙 観劇日時/05.4.28 劇団名/Teater・ラグ・203 公演回数/シアターZOO提携公演 作・演出/村松幹男 音楽/今井大蛇丸 劇場/シアターZOO |
謎の深まる物語 今まで観てきたこの芝居、我が子殺害の容疑者・平野の狂信が嘘っぽくて馴染めなかったのが、今回観ていて、リアリティを感じたのは、この役を演じた田中玲枝の理性的な側面が納得できたからであろうか? だから彼女が天皇制狂信のナショナリストであるという僕の仮説的読みが補強されたような気がしたのだ。 出演者が発表されたとき、異次元感覚が強い福村マリがこの容疑者で、理知的な田中が弁護士役だと推測していたのだが実際の上演では逆であった。 しかもラストで弁護士が錯乱していく展開にも効果的に働き、この配役の妙が満喫されたのであった。 ところで平野が弁護士に殺害されるとき、ほとんど抵抗らしい抵抗をしなかったのは、平野の覚悟であったのかと思われた。ラストで多田弁護士が恋人の蛯沢(平井伸之)に、その疑問を述懐するのを、この芝居を5回観てやっと今回気がついた。 そのことを、この芝居を昭和史に当てはめた僕の読みで考えると、ナショナリスト(容疑者・平野)に引きずり回されて自滅したリベラリスト(弁護士・多田)が、実はナショナリストの崩壊を予感したような見取り図に当てはまる。 この芝居も他のラグの芝居と同じように観るたびに謎が深まっていき、まるでパズルの組み合わせが一つずつほどけていくような快感がある。 動きがほとんどないために全編緊迫した会話劇だから、居酒屋の女の子(ゆみこ)をコメディリリーフにもってきた。切れ味の良い体技で盛り上げようとしたが、そしてそのタイミングもテンポも快調なのだが、少々浮いた感じだったのは、全体の雰囲気に合わなかったせいだろうか…… ラグは繊細で微妙な照明が魅力なのだが、このZOOの舞台ではいささか荒削りのようであったのが残念であった。 |