演 目
05
観劇日時/05.4.16
劇団名/yhs
脚本・演出/南参
劇場/ことにパトス


楽しめたエンターティンメント

 舞台は赤と黒の二色で造られた構成舞台、つまり舞台中心部の平台も背景も赤と黒で塗り分けられた抽象的な造形である。その舞台装置に今日のテーマである『05』が大きくロゴマーク風に描かれている。
時間が来て、登場する14人の出演者たちも、背中に『0伍』と黒く染め抜いた揃いの真っ赤な法被姿で、役者というよりは何かのイベントのスタッフのようであり、オムニバス風の各シーンを繋ぐインターバル要員を兼ねているようでもある。
 いくつのエピソードが演じられたのかは、はっきりとはしない。一つ一つが必ずしもきちんと独立しているわけではないからだ。特筆すべきは14人の出演者たちが、粒ぞろいに表現力の豊かなことだ。芸達者な彼ら彼女らの舞台を観ているとついつい引き込まれてしまうのだ。そんな中で印象に残った場面を紹介しよう。
 家族崩壊の話。簡単に一緒になった夫婦の仲が壊れ、立て直すために心療内科というかメンタルクリニックというか、そういうところの怪しげな医師だかカウンセラーだかのところで、滅茶苦茶なトレーニングを受ける話。
 具体的・現実的にはそんなことは有り得ないと思いながら、心情的にはあり得そうなやり取りが、滑稽にも不条理にもこれでもかこれでもかと笑わせてくれる。それがちっとも白けないのは、脚本の巧みさと役者の表現力の確かさにあるのであろう。
 明治末期の華族のお嬢様一家と、福島出身のその書生、書生の許婚、母親たちの対立抗争も面白い。荒唐無稽の話でありながら、テンポの良い役者たちの巧みさもあって長丁場をぐんぐん引っ張っていく。話が次々と意外な展開をしていくのが飽きさせなく、最後に、「与えられた自由は本当の自由ではない」などという取ってつけたようなコメントを残したが、2時間に亘るエンターテインメントは僕の関心を充分に満足させて、その幕を閉じたのであった。