第6回 そらち演劇フェスティバル2018

 行事日程/18.3.3~3.4  会場名/深川市 文化交流ホール み・らい

演目1 また ふる さとで
観劇日時/18.3.3 15:00~16:20   劇団名/富良野市民劇団 へそ家族 脚本・演出/樋口一樹  演出助手/志賀由佳・鈴木華歌 舞台進行/志賀中・菅慎吾  照明/木下祥太郎 出演/原正明・嵯峨紗邪華・志賀中・西東千奈津・嵯峨夢叶・中島吾郎・藤田シゲ子・ 志賀由佳・中村莉奈・工藤桃子・鈴木華歌・菅慎吾・新居仁奈・長野由香利・ 遠藤晴菜

 故郷に暮らしながら、街に出た子供たちの所へ転出しようかと、その誘いに迷う年配夫婦。そして故郷に残る決心の年配者。二組の老人の物語。僕自身の立場とそっくりなので、目の付け所はとても関心が深く、どうするのか見守った。
 この単純なテーマを、雪の精や川の精、旧い家屋の大黒柱や野外の大雪など、次々と出没させるのだが、それが未整理状況で展開するので話の核心が拡散してとても分かりづらく、「何が言いたいのだ」と叫びたくなる。
 そのたくさんの様々な魅力的で象徴的なシンボルが、すっきりと整理されずに無造作に出没しすぎるのだ。欲張りすぎなのだ。もっと絞ってすっきりと表現すると、きっと訴求力の強い良い舞台が出来たのだろうと少々残念な次第だった。

演目2 雪渡り  猫の事務所
 観劇日時/18.3.3 16:30~17:35   劇団名/たきかわ市民劇   脚本/たきかわ市民劇  演出/伊藤明子  衣装・道具/佐藤芽衣・高橋日佳・高橋房江  舞台美術/杉吉貢  劇中劇脚本/サンダース★池田  脚本補助/杉吉港  振付指導/たかはしちひろ  練習ピアノ/原亜祐美  演出助手/森昌之  音楽監督/三浦恒義  舞台/岩ヲ脩一  音響/大江芳樹  照明/高橋正和・大橋はるな  出演/子ぎつね=石山千紗・木村ひなた・木村まひる・          谷本結愛・安田琴音・米内こはる     子ぎつね・こん兵衛=佐々木栞音     フルート=疋田陸  語り・虎猫=池田亮  四郎=佐藤秀則  語り=杉岡未悠・砂原奈々・高橋美夕  清作・三毛猫=砂原圭吾  太右衛門・黒猫=高橋佳大  かん子・ぜいたく猫=高橋恵佳  こん助=廣野竣祐     語り・かま猫=松平華織  語り・白猫=渡邉美空  獅子=杉吉港

 原作をそのまま読んだだけのような舞台だ。確かに美しく壮大に展開するのだが、劇として迫ってくる力が極端に弱い。原作をこの様な形で観せられると、どうしてもイメージが限定されて、もう一度、原作を読み直してみたくなる。事実、僕は帰宅後に改めて原作を読み直したから、この舞台はそういう効果があったのかも知れない、皮肉で意地悪な感想かも知れないのだが……
 気になったことを二つ。
 まず、「雪渡り」は、四郎とかん子の兄妹が姉弟のように見える事、背丈も、かん子の方が高いし大人っぽい雰囲気が強く、四郎は童顔でガキっぽく原作のイメージを極端に損なう。
 そして「猫の事務所」のラストに出てくる獅子にまったく威厳がない。オチャラカシに出たような気がする。この場面の、この獅子の立場が全然、表現されていないから原作の意図が全く伝わらない。これもやっぱり帰宅して原作を改めて読み返したのだった。

演目3 靴~おとうさんの町工場~(朗読劇)
 観劇日時/18.3.4 15:00~16:00   劇団名/砂川市民劇団 一石  脚本/砂川市民劇団 一石   演出/太田晃正  制作/鈴木みどり  舞台転換/近藤愛矢・高橋透真  舞台/木全寿幸
 音響/浅岡あゆみ  照明/澤井裕樹  出演/山村昭夫(父)=鈴木伸之  山村シズ(母)=角丸礼子  山村三吉(息子)=西川悦郎 山村砂子(伸之の妻)=高橋香織  山村里美(昭夫と砂子の娘)=鈴木由乃  女医・ナレーター=山本阿弥  パントマイム=山本雛乃・鈴木由乃

 老夫婦と息子夫婦そして孫娘の設定が、「ふらのへそ家族」の『また ふる さとで』 にとても良く似ている。僕の存在とそっくりなのだが、また是か……と思ってしまうのも已むお得ない存在だ。
 この舞台もやっぱりチンタラチンタラと物語は進む。テキパキと展開してくれと叫びたくなる。そういう舞台……

      ☆

 以上の3作品は、とても一生懸命に創っているのは感じられるのだが、狭い範囲で
の自己満足の域を出ない。もっと演劇としての葛藤の際立たせ方と、芝居としてのエ
ンターテインメントを考えないと人に魅せる舞台とはならないとつくづく感じさせた。

演目4 パロディ忠珍蔵
 観劇日時/18.3.4 16:30~17:45   劇団名/ふかがわ市民劇団  脚本/渡辺貞之  演出/O・S・K  衣装・メイク/山上佳代子  衣装/蒔田佳代子  舞台/櫻庭忠雄・塩田美香  振付/菊地清大  音響/坂田直紀  照明/宮田哲自  出演/きらら上野介=櫻庭忠雄  深野内匠頭=佐藤自真  大石くららのすけ=嶋厚志  梶川よそ兵衛・赤垣源蔵=福岡慎太郎  大野黒兵衛・清水一角=及川孝幸  堀部安兵衛=長濱由佳 片岡げんごろう=岡田朋樹 矢頭右衛門七=矢戸暉弥  瑤泉院=池田由美子  戸田の局=金山さわ  ゆう=塩田ひより  赤垣姉=澤田早苗  赤垣家の女中=浦滝美佐子  たゆう=清水真由美  芸者(密偵)=布施優美  芸者=田島早苗・山上このみ・吉沢美玖・熊谷菜々穂  禿=布施海音  講釈師=渡辺貞之 

 

 ご存知「忠臣蔵」の話をパロディ化した舞台。でも話の芯はしっかりと押さえて、場面々々にギャグを入れる。そのギャグは単なるナンセンス・ギャグに留まらず、何と現代の社会情勢を刺しているのだ。例えば身近な「森友・加計の問題」など、その
他もろもろの現代社会の矛盾構造のギャグが入ってくると、この舞台は「忠臣蔵」と
いう古典演劇を使って現代社会を風刺している壮大な喜劇とも受け取れるのだ。
 この劇団は最高齢94歳から最年少は小学4年という懐の深い市民劇団なのだ。その、魅力と懐の深さとをたっぷりと魅せてくれた舞台だった。
 そのギャグの何点かの要点だけを紹介する。
 吉良から「きらら397」へ、それから農業政策の話題へ。
 ご公儀に逆らわず憲法改正し自衛隊を軍隊に位置付けるべきだという話題。
 討ち入りの議論の中で、国民に説明せず加計問題をうやむやにすると国民の支持率が落ちるという意見。
 この密談を漏らすと共謀罪になる。共謀罪が成立したり防衛大臣の暴言など敵討ちより自分の身の大切さを知った自覚。
 入れ替わりで出てくる用心棒がたった一人で何度も出るので不審がると「予算が足りない」答えて「不景気だからお互い切ない」という問答。
 などなど、どんどん話題が展開して行く……