サクラダファミリィ
観劇日時/18.1.25  14:00~16:00 劇団名/イレブンナイン 上演形態/札幌演劇シーズン2018・冬 レパートリィ作品 脚本・演出/納谷真大  照明/上村範康  音響/大江芳樹 舞台美術/高村由紀子  舞台監督/上田知  衣装/橋場綾子 宣伝美術/箕輪俊介・内海智美  写真撮影/クスミエリカ 制作/小室明子・イレブンナイン  ゼネラルマネジャー/カジタシノブ 劇場名/コンカリーニョ

頑固一徹で悪者視された男の本質

 78歳のイワオ(=納谷真大)を当主とするサクラダ家は、現在7人目の妻・キヌエ(=小島達子)と、その子・マツコ(=広瀬詩映莉)との三人暮らしである。実は三女のマツコには全部母親の違う4人の兄と2人の姉がいた。
 今年の大晦日に頑固一徹のイワオは、その6人の母親の違う息子たちと娘たちと、その家族たちを集めて25年ぶりの年越しを祝うことにした。6人には6人それぞれの事情があって中々おいそれとは簡単には集まれない。
 それでも何とか都合をつけて徐々に集まってくる。イワオは近所の教会の5人のシスターたち(=ちーしゃみん・後藤七瀬・工藤紗貴・城田笑美・小野洋子)の所へ行って何とか今日の集まりの趣旨の挨拶を練習しようとする。
 頑固でわがままで暴力的な父親ではあるが血は争えない。そんな父が何とかしたいと言うのだから6人は何とかして集まってくる。
 このサクラダ家の年越しは、蕎麦ではなくて何とカレーライスなのだ。その夜、その秘密が判った。グレて25年前に行方が分からなくなった次男のナツオ(=江田由紀浩)はキヌエと密かに連絡があったのだが、実はナツオは蕎麦アレルギーがあって、そのためにサクラダ家ではカレーライスで年越しをすることになっていて、集まった皆はそのサクラダ家の年越しカレーライス・パーティを懐かしがった。
 そして最後にイワオは秘密を告白する。実はイワオは戦災孤児で幼時に被災して生殖能力を失っていたのだった。つまりこの兄・姉たちはすべてイワオと血の繋がりはない。唖然とする全員。しかしそれ以上をイワオは言わないし、子供たちもそれぞれ一家を構えている立派な大人だからそれ以上は追及しない。血は繋がっていなくても、親子は親子だし兄妹は兄妹だ。
 イワオはもちろん子供たちも一切言わないし聞かないけど、おそらくこの7人の子ども達は不幸な母子家庭だった母子をサクラダ家に入籍して養育したのだろうと想像できる。年越し蕎麦をカレーライスにするイワオの優しい心情。
 頑固でわがままで自分勝手で暴力的な父親像はひっくり返るが、そのことを謝罪するイワオを慰める形で一同はサクラダ家を解散して改めて年越しをする。でもイワオは我が人生を全うしたと信じる。今後は施設に入所して最後を送るつもりだ。
 正月、一人で茶を飲むイワオの部屋に一人暮らしを始めたキヌエとマツコがそれぞれ偶然に年賀に来たところで終幕だった。
 その他の出演者/
  長男・ハルオ=明逸人 その妻・オリエ=澤田未来 娘・サキ=鈴木花穂
  三男・アキオ=藤本道 その娘・ユウナ=宮田桃伽
  長女・ウメコ=上總真奈 その夫・タロウ=梅原たくと
  四男・フユオ=櫻井保一 その彼女・リカ=小西麻里菜
  次女・タケコ=大和田舞 
  その彼氏・城ケ島ワタル=菊地颯平・(Wで)ヴィンセント藤田
 この人たちが全編に亘って主題に関係する沢山の話題を次々と演じるのだが、その詳しい内容は、この舞台を観た観客だけの特権である。現代喜劇として秀逸な舞台であったと思う。