零番目の七不思議  観劇日時/17.9.16 14:00~15:00  劇団名/北海学園大学演劇研究会  公演形態/夏の新人公演2017  チーム漆組
 脚本/串間俊哉  演出/横山貴之   照明/南昌宏  音響/馬場紗里奈  映像/篠田愛美・山﨑拓未  
 劇場名/BLOCH

未来を亡くした少女たちと、現在を享楽するだけの少年たち

ある高校―進学や就職の話題が多いから、恐らく高校だと思われるのだが、それにしてはランドセル風のバッグを背負っているから初めは小学生かと思ったのだが―その中の悪ガキ4人のグループ(陸=中村昇太・陽向=千葉超與・大助=小川大揮・蓮=菊地健太)たちが、翌日の夏休み初日に集まって宿題を全部やってしまって夏休み中を力一杯に遊び回ろうと計画する。 それがいつの間にか学校で噂されている七不思議の謎を探検する話になって行くのだが、それらの噂話は、鏡に映った自分の姿とか、警備員(石澤恵栄)の懐中電灯の光線だとか、たわいのないコケ話で、それらが大騒ぎにナンセンスに演じられて同年配の観客たちは大喜びではしゃいでいるから、彼らは日常的にこの程度の話で喜んでいるのだろうか? キチンと創られたものではなく、単なる空騒ぎだからあまり面白とは言えない。 その中に同級生だった二人の女子高生(礼香=竹道光希・優実=仲谷実里)が現われて仰天する四人。トップシーンで裁判所の場面があったが、おそらくこの幽霊たちはその裁判と関係があるらしいのだが、そのシーンは裁判長(=佐々木俊哉)と被告人(=五島基愉)が大声を上げて無茶苦茶に大騒ぎをするだけだから、裁判の経緯も成り行きもさっぱり判らず仕舞だった。 この幽霊たちは、元・同級生四人に向かって、将来の目標は決まったの? と問い掛けるのだが、この四人は現在が精いっぱい楽しいから将来のことなど考える余裕も必要もないと言い張る。 何度も会って説得される中に、大助がただ一人「就職する」とだけ言う。それも確とした意志ではないようだ。そういう返事をせざるを得ない雰囲気だけのような展開……おそらくトップシーンの裁判との関係があって、この悪ガキたちは、この幽霊少女たちに責任というか、あるコンプレックスを背負っているのじゃないのか? という推測を残す。 現実の未来を亡くした少女たちの将来への強い憧憬と、これから未来へ向かって伸びなければならないのに未来への想いのない存在である少年たちとの対立…… そのテーマの着眼点は中々良いのだが、いかんせん、その展開描写がナンセンスな大騒動だけなので魅力が充分に発揮されていない。基本をキチンと表現して、伏線と思われる裁判シーンやギャグ・シーンを織り交ぜてゆくという表現法がなぜ出来ないのか? これが現代っ子なのだろうか? 僕の感覚から見ると不思議で残念な思いが強いのだ。

その他の出演者/先生(=横山貴之・中田潮音) 女子生徒(=見上綾理)