大山デブ子の犯罪  劇団名/風蝕異人街  上演形態/新ユニット「赤色カーニバル」第1回公演  観劇日時/17.9.9 15:00~16:20  
 作/寺山修司  演出・装置・照明・音響/こしばきこう  振付/牛島有佳子  協力/平田雄介  制作/劇団 風蝕異人街
 劇場名/アトリエ 阿呆船
 出演/
  魔子=こいけるり    団長・魂の刑事=平野たかし   大山デブ子=山川瞳   一の男(釣りマニア)=河口巧海   老処女=福村由美子   大食漢・ミスターニッポン=高橋信也   為子=赤坂みゆき    胃袋魔人=織羽  
  美少年=國ヲ      裸の女=蜜    美少女=田村咲樹    美少女=雪   友情出演=堀きよ美・高城麻衣子

欲望の象徴は、人々の妄想・欲望が倦んだ非実在の人物だった

初演(04年6月20日)の観劇では、〝マイノリティ(少数派)を差別することによって、己のアイデンテティ(自分の個性)を確認するだけであったのだろうか? マイノリティを容認することによって、己の精神の広さを自ら確認する満足度に酔うのか?"(『続・観劇片々』第5号)と結論している。 再演(11年9月23日)の観劇では〝食欲の止まらない欲望に応じて食べまくったために命を失ったのに、いまだに止まらない食の要求の為に食い尽くす人たちが存在して、その究極の犯罪が原発の暴発だ。この舞台は人間の絶えない欲望と文明の行き着く先の怖しさを描いている〟(『続・観劇片々』第34号)と結論している。 そして今回の三演目だ。演出が述べている通り「日常的ではない一種の別世界を覗き見るサプライズの高揚感が強い」そしてそれよりも大事なことは、20年も前に亡くなったとされる欲望の象徴である大山デブ子は人々の妄想・欲望が倦んだ非実在の人物であった、というラストが最も強く印象に残ったことだった。つまりデブコは人間の限りない欲望の象徴なのだ。そして欲望は最終的には破滅するのだと強く感じられた。 もしかして、これは三回とも戯曲台本に手入れをしたのではないのか? と思われるほどであった。すべて同じ本だったら演出の押さえどころなのか、観る方の感性の問題なのか、是非、戯曲自体を読んでみる必要を強く感じる。