漢達の輓曳競馬
 観劇日時/17.4.16 14:00~15:25 劇団名/道産子男闘呼倶楽部 公演回数/第1回公演 シアターZOO提携公演 作・演出/ニシオカ・ト・ニール 照明/野中千絵 美術/加藤ちか 音響/鯨井拓実 舞台監督/田渕正博 宣伝美術/小島達子 宣伝写真/星野麻美 受付票券/椿組 制作/道産子男闘呼倶楽部・小島達子 主催/道産子男闘呼倶楽部・北海道演劇財団・NPO法人札幌座くらぶ 劇場名/シアターZOO

信頼の熱い男同士はかつての同級生

40代になって会社をリストラされた金平(=津村知与支)は職安に通っていたが無理な要求が多すぎて何度通っても就職先が見つからないが、生活の為に身を隠して掃除人として世を凌いでいる。
ある時、街で偶然に高校時代の同級生・内藤(犬飼淳治)に会う。内藤は道端でハトや雀に与える米粒を集めて、それに絵や文字を描きこんで一粒80円で売り何とか食事代を稼いでホームレスをしていた。
2人は何故か意気投合し、金平は内藤に一泊500円で泊まらせてやると言うのだが内藤はそれを200円に値切り金平は承諾して内藤を金平の家に同居させることになる。
金平は見栄を張って様々な嘘を重ねるが、内藤は若い時にバイト先で事務所の金を盗んだと疑われ、何故かその金が内藤のバッグの中にあり、無実だが誰かが証拠隠滅を謀ったのか立証できずに執行猶予付きの前科が付く身となっていた。それ以来内藤は貧乏だが密かに正直に生きてきたのだ。
舞台中央に大きく置かれた金平の部屋の装置はそのままで、次から次へとシーンが激しく展開して紡ぎだすエネルギッシュな迫力は、まるで映画のようだ。
見得を張り嘘を重ねる金平はやがて身動きが取れなくなり、行きがかり上、職安の女子係員に強引にデートを迫って強迫暴行未遂で留置された挙句に微罪釈放されたが金平は絶望する。逆に内藤には少しずつ運が傾き、宿舎付のバイトが見つかる。
だが立場が逆転しても、信頼の厚い二人は協力して、金平の部屋を整理し、再出発へと向かう。
ラストスーン、最後に残った中央の大きなダンボールで出来た棚には、金平が大事にしているという貴重本のマンガ雑誌がびっしり詰まっている。これをどうやって片付けるのかなと思って観ていると、金平がひょいと片手で押すと、この大きな棚がいとも簡単に床に倒れた。見かけ倒しの外側だけで中身は全く無かったんだろう。
片側にはキャスターが付いていてアッケラカンと軽々と片手で押し去ってしまったのだ。これには爆笑だ。金平が後生大事にしていた様々な貴重品どころか、彼の心の中身までも、その薄さ軽さを象徴しているのだろう。
底辺の中年男二人が壮絶で際どい駆け引きを交わしながらも絶対的信頼は保たれる一部始終が、食い違いの連続と筋立ての面白さで、真摯だけど限度の推量が付かない面白さに充ちた舞台だった。

職安の事務員と各職場の上司役は西岡智美が華やかさを派手に演じて嫌味なく笑いの上乗せをする。