りんご

観劇日時/17.4.12  20:00~21:20 劇団名/シアター・ラグ・203 上演形態/Wednesday Theater Vol.6 再演 作・演出/村松幹男  演出補/平井伸之 音楽/今井大蛇丸 音響オペレーター/久保田さゆり  照明オペレーター/瀬戸睦代 劇場名/ラグリグラ劇場 出演/山岸翔平=村松幹男  女=萬年わこ

自家薬篭中の微かなズレ

3月末の初日を観たときは、それまでにこの『りんご』の舞台を10年間に12回のステージを観ていて、その時は13回目の観劇だったのに、まるで初めて観た舞台のように感じられたくらいの衝撃を受けて、それから2週間後の今日の観劇でもやはり、何度観ても古典的名作は良い舞台であるという実感を受けた。
ただ、今日の舞台でちょっと引っ掛かったのは、被害妄想で受ける女の強烈な暴力が、初日の時の圧倒的な迫力に較べてやや欠けていたように思えた。恐らくそれは二人のタイミングが微妙にずれていたのではないのかと思われた。特に二回目の最後に倒れた男の背中に入れる蹴りが中途半端に見えたのだ。
多分、始めてご覧になった方には気付かれなかった程度の瑕疵かも知れないのだが、初日を観た僕にはやはり気になって、終演後、村松さんにそれとなく聞いてみた。
やっぱり気になっていたそうで、「微かにずれた原因は、稽古時間の不足で肝心のタイミング合わせの稽古が不十分だったと思われる。」と仰っていた。
恐ろしいことだ。この『りんご』という舞台は一時的に、役替えもしているが合計で100ステージ以上も上演されていて、自家薬籠中のレパートリィであるはずなのに、こういう結果を出して、しかも自身が自覚しているのだ。

今日の舞台は、そんな別の感慨をも持ったのだった。