只ほど高いものはない
 観劇日時/17.6.24 18:00~20:00  劇団名/FAP´  公演回数/FAP´企画公演

 作/三島由紀夫 演出/高野翔子 舞台監督/広光洋一 美術/福田恭一  照明/鈴木静悟 音響/西野輝明 菓子装飾/長谷川碧  制作/FAP企画  制作補助/田端皆美・松浦ひかり
 劇場名/ターミナルプラザことにPATOS
 出演/
  夫・近藤虎吉=渡邊秀敏   妻・成子=小山由美子   娘・克子=本吉夏姫     息子・達男=古屋遼   克子の許婚・春雄=斉藤秀規   両角ひで・(虎吉の元カノで現在は近藤家の女中)=森安ひさえ

夫の元カノだったお手伝いさんは、無料のはずだったのに 結局、高い存在だったという喜劇。

戦後・昭和のある中流家庭。妻・成子は夫・虎吉に女中を雇ってほしいと頼む。虎吉は勤務先の役所に〝両角ひで〟という老女が尋ねて来て「ただ働きでも良いから食事と寝る所だけあれば職種は何でも良い」と頼み込まれていた。
だがこの〝両角ひで〟は、かつて虎吉の浮気相手なのだ。そのことは成子も良く知っていて嫌な思い出が残っている。両角ひでは「罪滅ぼしに誠心誠意の女中奉公をする」と言っていたと、虎吉はいう。成子は一種の恨みを晴らす気持ちで両角ひでを雇うことにする。
娘の克子はこの頃、許嫁の春雄が婚約者気取りでいい気なっているのが許しがたい心境だった。克子の兄・達男が「春雄に女がいる」と密かに克子に言って混乱させる。
その中に〝両角ひで〟は、家中のことをすべて取り仕切り、〝両角ひで〟が居ないとハンカチ一枚がどこにあるのか分からない程の存在になってしまう。
こうして家中が〝両角ひで〟という無料(ただ)の存在が最も高い価値を有する存在になってしまったという矛盾の喜劇であろうか。
一種の心理的実験劇とも見える「当事者にとっての悲劇が客観的にみれば喜劇である」という典型的な物語であろうか。

気になったのは、成子の小山由美子以外の俳優たちが何ともぎこちなく、それぞれの役の動きや台詞を精一杯に一生懸命に動き喋っているように見えて、リアリティが感じられない事であった。こういう舞台は特にそういう作意が目立つと舞台に入っていけない不自然さが邪魔をする。