古事記殺人事件
 観劇日時/17.6.17 19:00~20:20  劇団名/劇団 怪獣無法地帯  公演回数/第25回公演
 脚本・演出/棚田満  照明/上村範康  音響操作/倉内衿香    衣装/大坂友里絵  舞台美術協力/濱道俊介・黒田拓  
 宣伝美術/中村犬蔵  協力/川原まみ・石岡綾子・小林沙亨
 劇場名/ことに PATOS
 出演者/
  神無月健介=足達泰雅   古渡警部=梅津学   犬山村長=長流三平   猿川神官=石橋俊一    牛古佐平=塚本雄介  雉間幾三=籠谷翔太   兎島松子=伊藤しょうこ  猿川巫和=長谷川碧  若林駐在=柳瀬泰二   猪村おはん=岡本淳子   猪村玉枝=原田充子  狸穴諏訪子=石橋玲   八百尼/神楽舞の舞手=屋木志都子        竜子=新井田琴江   田島辰哉=小林健輔   来九十郎=井口浩幸   方安和尚=忠海勇

現実をブッ飛ばすような事件が、現実を面白く象徴している

民俗学を研究している若い学生・神無月健介は「古事記」の記載事項を調査するために山奥の山村を訪れる。ところが偶然にも、そこの神社の御神体が盗難に遭い、続いて巫女の失踪事件、巫女さんの殺人事件と次々に奇怪なアクシデントに巻き込まれる。
だが、それらの事件は、これまた偶然にも「古事記」の記載事項と照合しているのだ。実はこの裏にはある秘密結社による、この村全体を自分たちの利益の為にひっくり返させる、大暗転計画があったのだった。
それは村の人たちを巻き込んで、わかってみればこの村を支離滅裂にする大陰謀で、神無月は、それに巻き込まれ邪魔者として囚われていたのだった。
神無月は、何が何だか分からず、ひたすら「古事記」の予言とその展開とを信じて動き回る。
大騒動は村長も駐在も村の有力者も敵味方にわかれて寝返ったり分裂したり、それぞれの欲望の強さに従って騒動を大きくしてゆく。
登場人物たちの形式的演技が実はリアリティを面白く表現する保障をしていたり、二転三転する善悪の変わり身の展開、考えてみれば、それは現実の世界にも通じる人間の欲望の象徴であるのかもしれない。エンタターテインメントとしてとても面白い展開だが、その中にしっかりと芯が感じられる佳作であった。