三人姉妹の憂鬱
 観劇日時/17.6.17 15:00~16:05 劇団名/風蝕異人街  
 原作/アントン・チェーホフ
 潤色・構成・演出・装置・照明・音響/こしばきこう  映像記録/坂田洋一  協力/山川瞳・平田雄介  制作/劇団 風蝕異人街
 劇場名/阿呆船
 出演/「女優イリーナの役」・「娼婦イリーナ役」の俳優=堀きよ美     「オーリガの役」・「トゥーゼンバフの役」の俳優=三木美智代     「マーシャの役」・「トムの役」の俳優=高城麻衣子     「売子イリーナの役」の俳優=こいけるり     「チェブトゥイキンの役」の俳優=小芝季呼     「演出家の役」(声)=こしばきこう

論理を説明する舞台

潤色・演出のこしば氏は、その演出ノートで『(松井/抜粋・要約)イリーナの有名な台詞「私、分かっていた」にどんな意味があるのか、そのリアリティのなさに思わず「嘘だ」言ってしまう。』と書いている。
さらに、「この作品はリハーサル中の『三人姉妹』の中から、チェーホフの言う『外面的なものから内面的なものへと、俳優たちの心理的な世界の感情を示すため』なのである。」と述べている。
登場人物たちの現実の内面(松井・註=登場人物を演じる俳優の個人的な現実の内面?)のドラマを見せることになる。どうやってチェーホフの言葉(台詞)の背後にある「内面的ドラマ」(演じる俳優の現実のドラマとしての存在)を表現するのだろうか?
こしば氏は、とてもユニークな所に目を付けた。『三人姉妹』を演じる三人の女優たちが、現実の自分たちの個人的存在としてのドラマを発見していくところに新しい別のドラマが生まれる。その大きな期待をもって客席に座った。
だが、実際のこの舞台では、『三人姉妹』の女性たちと現実の女優たちの日常が混沌として区別がつかない。どこまでが『三人姉妹』でどこからが現実の三人の女優たちなのか? だから俳優の現実のドラマが浮かび上がって来ないのだ。
風蝕異人街独特の台詞術と言うかイントネーションというかが『三人姉妹』と現実の両方に跨るので更に区別がつきにくい。『三人姉妹』の台詞を詳しく記憶しているわけじゃないので混乱するのだが、その中でただ一人、こいけるりさんがナチュラルでリアルなセリフ術なのだが、逆にそれが『三人姉妹』の中の台詞になると混乱する。

舞台全面が稽古場なので、その中で着替えると舞台のイメージと現実のリアルが交錯してやはり混乱する。結局、残念ながら、この女優たちの現実の憂鬱はついに浮かび上がっては来なかったのだった。意識倒れに終わったような残念な観劇感だった。