アイ*ノウ
 観劇日時/17.6.10 14:00~16:10  劇団名/札幌ハムプロジェクト
 脚本・演出/すがの公
 劇場名/シアターZOO

自覚出来ない妄想の中の苦悩

ストレス性の短期急性記憶障害症を患ったイラストレーター志望の女性(=天野ジロ)は、その事を理解できなくて、家族や医療関係者たちの多くの人間関係との軋轢の中で悩んでいる。これもこの症状の一つの表れでもあるらしい。
だからこれは通常の精神的な苦しみとは基本的には異なるといえども、生きている日々の中で悩み苦しむという事実では同じことであろうか。
つまり短期急性記憶障害症という肉体的な原因に例えて、人間の苦悩のすべてを象徴させているように思われる。
現実的にはあり得ない行動や関係性が出現するのだが、それがこの舞台では納得できるのは、彼女の脳の働きの異常に依るわけで、それが通常の苦悩を象徴していると思われる。
全体が恐らく彼女の夢というか妄想の中の出来事らしく、この構想自体はなかなか面白いのだが、恋人となるシンガーソングライター(=蝦名摩守俊)や役柄不明の男(=佐藤塁)たちがゲストで登場しても、まるで存在感がない。せっかく出て来るのに、特に佐藤塁の存在は意味不明である。そして全体に繰り返しや無駄な細部が多くそれは意識的に混乱させているのかもしれないが、その表現法に細心の方法論がないと、無心の一人の観客として飽きて来るのはやはりマイナス点であろうか。

その他の出演/渡辺ゆぱ・佐々木陽子・すがの公