5月の蝶  観劇日時/17.5.28 12:00~14:00  劇団名/クラアク芸術堂  公演回数/第1回公演
 作・演出/小佐部明広  舞台/高橋詳幸  舞台デザイン/高村由紀子   照明/上村範康     音響/大江芳樹・小佐部明広
 衣装/松島みなみ・喬本珪  Dモン衣装原案/川口巧海  小道具/佐藤智子  ダンス振付/遠山くるみ  映像/荒木洋航       宣伝美術/山木眞綾 
制作/山木眞綾・種田基希
劇場名/コンカリーニョ
出演/
田崎治=有田哲    浦波シジミ=脇田唯  後藤さん=伊達昌俊   宮間アサギ=田中温子 不破渦斗=町田誠也  浦波丸尾=井口浩幸   松尾減俸斉=高橋寿樹 浅間緑=田邉幸代   ラフィ=若月篤   握り丸=長枝航輝   ミッキー=佐藤誠   Dモン=信山E紘希   大村さき=遠山くるみ 来栖進=中村雷太   片巣トロ子=檜山真理世   青葉せせり=八木友梨 モトキチ(映像出演)=種田基希

5月の蝶と世界の終焉との謎

16人の登場人物が演じる2時間の大長編。宣伝リーフレットを読んでも客席へ座ってから当日パンフを眺めても殆んど何が何だかすっきりと来ない。
漬物屋さんの営業方針に対する家族間の話し合いだったり、漫画家と担当編集者との見解の相違だったり、幼馴染やその周囲の男女関係のさや当てだったり、しかもそれが幻術や妖術や様々な思い込みだったり人物が入れ替わったり時代が逆行したり、ますます意味不明の世界に迷い込む。
物語を追究する僕としては、何とかして何がどうなったのかを確定したいのだが、訳の分からない展開が延々と続くと普通の場合、ほとんど眠くなるのだが、なぜかこの舞台は訳の分からないままに惹きこまれて行く。そして一生懸命に、この物語の顛末を理解しようと頑張っていたのだった。
途中から、これらの訳の判らない物語は恐らく、このマンガ家の作品が、いつの間にか現実となり、その現実が逆にこのマンガになり、その交錯自体が、このマンガ家にも判らなくなって行くという展開なのだろうかと納得した。 
でもそれは僕が無理やりに辻褄を合わせたことであって、この舞台の本質を解明したとは自覚出来ない。いちばん不安なのは「5月の蝶」というタイトルと、この舞台との関係、黄色い蝶のシンボリズムと時に出る灰色の蝶との関係、そして5月1日で世界の終焉が予告されていることとの関係などなどタイトルに関わる肝心の表現の謎が見えなかったことだった。

          ☆

「中世の絵巻物にはチョウがほとんど現れない」という、歴史学者・網野善彦氏の文章を紹介しているのを見かけた。「人の魂と考えられ、むしろ不吉とされていたからではないか。その美しさに、かえって恐ろしさを感じていたのではないか」と続けられている。また常識的に蝶は、美しい、繊細、華麗な動き、などのプラス・イメージと同時に「儚さ」のイメージも強いようだ。
そのイメージから、人生というか人間の存在に対する予告あるいは妄想みたいなことが湧きあがってくる。