北海道短編演劇祭 観劇日時/17.3.18 ] 劇場名/琴似 コンカリーニョ 前半4作品 17:00~8:05(途中5分休憩)

演目1  エクストラ・テレスト・リアル 上演団体名/西区住民参加温故知新音楽劇 脚本/渡辺たけし  演出/町田誠也 出演/村田ひろ美・渡辺順子・永野亜也子・下井ななせ・    下井ほなみ・下井まり子・立花花恵・寺田ふう・中村るみ子

リアルの中の幻想

スーパー精肉部の昼休み。会社との縺れや4人の主婦バイトたちの軋轢がリアルに描かれる。
そこへ宇宙人を自称する幼女たちが現われるが、宇宙人は市役所か警察に届けなければならないことになっている。
しかし可愛いし別に危害があるわけじゃないからそのままにしておく。すると宇宙人が水を飲むたびに宇宙人の妖女=幼女が一人二人と増えて行く。そして彼女たちは奇妙な宇宙語をコミカルにスピーディに喋りまくる。
宇宙人は何を象徴しているのか? スーパーのバイト達のリアル社会と宇宙人の幻想がしっくりと噛み合って逆に現実感が強く、演劇の特徴をうまく生かした独特の面白い短編であった。

とくに宇宙人の妖女=幼女たちの喋る宇宙語が奇妙奇天烈なのだが、よくあんな不思議な言葉を覚えたなと感嘆すると同時に、それが実に可愛く可憐なのだった。

演目2  驟雨 上演団体名/総合学園ヒューマンアカデミー札幌校OBチーム 脚本/岸田國士  脚色・演出/甲斐大輔 出演/工藤沙貴・星健太・山田彩佳・飛山薫

無理に形を造っただけの舞台

作り物っぽく演技の裏付けがない。無意味に造った表情やいつも笑っているような表情。ワザとらしい大袈裟な動き。折角の名作が台無しの、表面をなぞっただけの無理に形を造った臭い舞台。

演目3  ダウト 劇団名/41×46 (=函館) 脚本/工藤舞  演出/舘宗武 出演/いいづかゆたか・くりすてぃーぬ・梶原紗紀・佐藤みほ・嶋田恭明

遊びながら話をする演技力

同窓会での先輩2人と後輩が1人。3人が同室で「ダウト・ゲーム」をしながら高校時代の恋バナや一人一人のリアリティある回顧談に耽る。
そこへ話に出てきた当時の先生が割り込む。生徒たちが当時の先生の悪行を暴こうとした時、先生が弁解しようとすると全員がダウトを宣言する。
単純な何ともない話だけども、ダウトをしながら昔話をする演技力は確実な力だし
なんとも他愛ない話ながらほのぼのとする。

演目4  恋はいつでも、レイアップ? 劇団名/わんわんず 脚本・演出/田中春彦 出演/石川哲也・由村鯨太・田中春彦

体力勝負の物凄い舞台

恋愛禁止の部則を嫌って全員が去り、たった一人残った部員と徹底的にしごく監督の先生。そのバスケットボールの練習だけが延々と演じられるが舞台上とはいえリアリティが強い。
バスケットのゴール板がラストの生徒のシュートの時にググッと下がってこの生徒の力が付いたことを示し、先生の時には異常に高く上がって落胆する仕掛けの面白さに満場爆笑する。
特に深い意味は見いだせないが舞台の魅力は強い。



後半4作品20:00~22:07(途中5分休憩)

演目1  驟雨 上演団体名/総合学園ヒューマンアカデミー札幌校OBチーム 脚本/岸田國士  脚色・演出/甲斐大輔 出演/工藤沙貴・星健太・山田彩佳・飛山薫

演目2の再演

演目2  3匹のおやごさん 劇団名/演劇ユニットT☆SProject (=旭川) 脚本・演出/高井尚樹 出演/島野浩一・塩野谷ひとみ・久我山節奏・小野静香・木下大希

混乱する中年男たちの人生観

中年の3人の男たちが子供たちのことを心配して、自分たちの高校生だった時代に戻ったり、また中年時代に帰って来たり、時空間が行ったり来たりで混乱する。短い時間で話が複雑すぎる。
その他に亡くなった同級生に乗り移った、その同級生の妹が加わって4人の高校時

代も語られるが、これまた複雑で短い上演時間では説明不足で理解に苦しむ。この3人の人生観が混乱する。

演目3  フルプラスティック・ジャケット 劇団名/ミユージカルユニットもえぎ色 脚本/深浦佑太  演出/光耀萌希 出演/宮永麻衣・国門綾花・森高麻由

生き返った女の唄

生きる事に絶望した女が裸で街を彷徨っていたとき、ウインドウーの煌びやかな2人のモデルに魅入られ、誘われてひと時の華やかな夢を見る。
でもそれは物質であるモデルにとっては過酷な負担であった。壊れたモデルたちへ、その女は再び希望の夢を託して踊り歌う。
全編が踊りと唄なので特に歌は歌詞が不鮮明なので特に前半が意味不明だったが、絶望から再生する女の喜びは確かに感じられる。

演目4  眠るわたしは、何処にいるのか 劇団名/劇団 清水企画 脚本・演出/清水友陽 出演/高石有紀・中塚有里・畑山洋子

イメージの急速な転換

夢を買う人と夢を売る女。そしてその夢を売る女の娘。母と娘の夢も売るという行為も現実的だが、買う人は非現実的だ。
夢幻的な話が象徴する意味は不明だが、徐々にあるいは繰り返しによるスピードアップや照明の激しい点滅による場面転換、駒落し的な転換など様々な技術によるイメージに触発されるものがあるようだ。
だが、その核心が掴めないままに舞台のイメージをずっと心の中で暖めている。