映画 海街diary

DVD鑑賞 鑑賞日時/17.1.27 14:00~16:10 原作/吉田秋生  脚本・監督/是枝裕和  製作/石原隆・都築伸一郎 場所/アートホール東洲館 出演者/香田幸=綾瀬はるか 香田佳乃=長澤まさみ       香田千佳=夏帆   浅野すず=広瀬すず

母違いの4人姉妹の日常生活の微細な描写

始まって間もなく、これは小津安二郎監督映画の雰囲気にとても良く似ている感じがした。具体的にははっきりとは言えないけど、家族間の心情の柔らかさ優しさが芯の強さによって成り立っているという風な印象である。
鎌倉に棲む三人姉妹の父親は14年前に家を出て山形で再婚していたが亡くなった。その告別式に出席したら腹違いの妹が居た。三人はその妹を引き取って4人姉妹として鎌倉での新しい生活が始まる。そのこまやかな日常生活が微細に描かれる。
 この人たちの中で、4人姉妹の亡くなった父親が一番幸せだったのじゃないのか、と思っていたら、ラストに近く、親しい食堂の女主人が、今は4人姉妹の末妹になって幸せなすずに向かって「亡くなったあんたのお父さんが一番幸せだよね」といった。確かにそうなのだ。一見、この父親は自分勝手のようにみえるけど芯は善良な人なのだ。だから、こういう幸せな4人姉妹に恵まれたのだと痛感する。自分では分からなかったかもしれないのだが……
脇筋が複雑で分かりにくくて、だからリアルなんだろうけど、時々、相関図や話の成り行きが分からなくなる。でもそれは雰囲気を感じれば良いと思う。
高名なマンガが原作だが、予めストーリィを読んできたので、それほど訳が分からないとは思わなかった。でも予備知識なしに観たら混乱するか退屈するかもしれない。
次に映画版のストーリィも読んでみた。さすがに一年間という時限の中に整理されていたから分かり易いけれども、それでも錯乱する。問題は複雑な人間関係ではないのだ。誰にでもある日々の生活の中で、接し感じる心情の機微の表す感情表現力が、それを観る人の心に訴える力ではないだろうか。
様ざまな次々に起こる小さな葛藤を受け入れ自己反省し穏やかな日常を営なもうとする本来の嫋やかな心情をこまやかに表現しようとした一つの意志がこの映画の芯であり観る人の心に柔らかく訴えるのだ。