お伽の棺

観劇日時/16.11.23 14:00~15:40
劇団名/カチノル(韓国・光州市)
公演形態/韓国光州広域市演劇協会・
公益財団法人北海道文化財団交流事業
主催/公益財団法人北海道文化財団
後援/駐札幌大韓民国総領事館・北海道
協力/さっぽろアートステージ2016実行委員会・札幌劇場連絡会

作/横内謙介  演出/キム・ヨンロク  演出助手/イ・チョルスン
脚色・翻訳/キム・ムングァン  舞台デザイン/イ・ホン
照明デザイン/シム・ソンイル  照明/カン・ウォンミ+秋野良太
音響/ヤン・スンジュ  衣装デザイン/パク・ソヨン
コーディネーター/木村典子  劇団代表/イ・ヨンミン

劇場名/シアターZOO

事実と処世の虚偽

貧困な村の雪の中、孝行息子の善治(=ファン・ミヌ)は大雪の野原に倒れていた見ず知らずの若い女(=キム・ヤンヒ)を助けて家に連れ帰る。つまり、これは『鶴の恩返し』の発端だ。
しかし、母・清(=イ・ヒョンスク)は「知らない人は不幸を持ち込むから元の雪野原へ捨ててこい」と厳命する。
一人親の母に逆らったことのない善治も、そろそろ嫁が欲しいが、こんな貧乏な家には来る嫁もいない。それにこの女性は美貌で魅力的だ。このまま元の雪野原に戻すと寒さで生きてはいられまい。彼女も助命を懇願する。
争っている中に善治は、つい無意識に、母が脅しのために持っていた鎌を奪い取り、勢いで母を殺してしまう。驚いた二人は母の死体を埋めるが、母が仕事で織っている反物を受け取りに来る嘉六(=シム・ソンイル)を欺くために、女(善治は彼女をタズと呼んでいる)は機織屋へ入って機織りをする。
その時に気付いたのだが、以前、母が織っていた時の音は随分のんびりとテンポのずれた素朴な音で音響効果が未熟なのかと思ったが、タヅが織るとその音は、グンとグレードアップしてリスミカルで機織りの技術が高いことを感じさせるのだった。
タズの織る「鶴の錦」はかつて見た事のない美しい反物で、長者に気に入られ莫大な賃金を受ける。
善治は嘉六に本当のことを打ち明けて、母を丁重に葬送し、タズの織る「鶴の錦」を村の人たちに教えて生活をやり直したい。
だがタズは美しい物が必ずしも美しい心で出来るものではない。様々な汚れの結果を覆い隠して出来る事もあるのだと言い、嘘を通そうとする。善治の罪を公にしたくないのだ。
嘉六は真相を知りつつあった。雪解けと共に現れた母・清の遺体を見て、犯人は他郷から来たあの女であり禍をもたらしたのだから捉えて処刑するという。善治は本当のことを言うのだが、嘉六は、それは隠してタズに全責任を負わせろと言う。
タズは何枚もの「鶴の錦」を織り上げた所を嘉六達に襲われて、鶴になって夜空へと飛び去る。
中央に造られた粗末な井形の囲炉裏と、背景に地味な布製の仕切りが垂れ下がっていて、それには窓のような切込みがあり、そこが機屋であり玄関でもあるらしい。
如何にも韓国風の熱演の、この入り組んだ複雑な心理葛藤劇に魅入られた百分であった。
開演前・中幕・終演後に歌人=ソン・ジョンファが出演して詩を読む