タイトルの意味を「無邪気で楽しい雰囲気」だと勝手に思い込んでいたのだが、この舞台を観たら、それは一種の非常識で狂気な行動の例ではないかと思われた。
つまり愛し合っている二人、能天気な女・コリー(=森田晶子)と、弁護士としての初仕事を控えた男・ポール(=村上義典)の普通の感覚がぶつかり合って収拾がつかなくなる経緯が段々に激しく展開されるのだ。その例として挙げたのがタイトルの行動なのだ。
だから、この魅力的な戯曲を取り上げた意図は頼もしい企画なのだが演技者に問題があった。ポールの村上義典は何とかこの男の心情の起伏を維持したのだが、コリーの森田晶子は覚えた台詞を必死に暗唱するのに精いっぱいの感じで、しかもカミカミの続出でなんとも痛々しい。
コリーの母親・ミセス バンクス(=小林なるみ)も、お調子者の老人・ヴィクターヴェラスコ(=齊藤雅彰)も見た目には、それらしい雰囲気だが、やっぱり余裕が感じられないのはいささか不満が残る。それに比べて僅かしか出番はないのに電話工事人(=能登英輔)がこの舞台の雰囲気をさりげなく感じさせていたようだ。
気になったのは舞台装置だ。安ボロアパートだからガタガタなのは良いとして、それはアパートにガタがきているのじゃなくて舞台装置の造りが雑なので今にも天窓やドアが崩れそうなのが気になる。
シーン転換の裏方が裸の腕が見えるのも興を削ぐ。こういう洒落たロマンチック・コメディにはそぐわない如何にも手抜きの感じが魅力を削ぐ。折角の青井陽治・新訳が勿体ない。
その他に配達人役で伊能武生が出演する。 |