眠れる森の死体

観劇日時/16.11.12 14:00~15:30
劇団名/北翔大学 舞台芸術3年目公演 VOL.8
作/古城十忍 演出/村松幹男

照明/藤原達也  音響/樋口瑠里子
音楽/高橋郁也  宣伝美術/金子舞香

劇場名/ポルト・ホール

浮遊する少年たちと大人の世界

粗大ごみ捨て場と化した空き地。そこで真っ白のキャンバスに映る影をひたすら写真に撮る予備校男子生徒・エイジ(=松永颯)。ベッドを捨てに来る男子高校生・ヒロミ(=下川祐希)とオサナイ(=池田拓斗)の2人。何気なく付いて来たような女子高校生・アキラ(=佐藤李香)。その隣は大きな病院。小さな「おや?」が、大きな罪を連れてくる。……と内容紹介には、そのように書いてある。そして舞台は始まる。
この人ヒロミとアキラの名前は、それぞれ男女が逆のようにも受け取れる印象でもあり、自分たちもそれを知っていて身体と心とが逆だと言う会話もされる。
ヒロミとオサナイにはアキラの姿が見えないがエイジには見えて会話もするが写真には写らない。彼女はこの大学病院で虫垂炎の手術を受けている最中なのだが、本人の病状申告と担当医師・猪瀬(=小栗太良)の術中診断とが一致しない。そして猪瀬はエイジの父親であるらしい。
境教授(=高橋郁也)と麻酔医(=金子舞香)は、猪瀬医師の誤診による大量出血だと糾弾するが、猪瀬はアキラの病状申告の間違いだと断言する。
こういう行き違いによる悪化の経過がジリジリと展開されるが、それは必ずしもキチンと論理的ではない。大人になろうとしつつある男3人と女1人の存在は夢幻的というか儚い夢想というか、大人の医師たちに較べて現実的な存在とは言えない。
この4人の少年少女と、大人たち3人の場面が、時として交差しながら続いていくのだが、大学生の演技者たちとしては、その両世代を的確にキッチリと演じていたのが印象的だった。若い演技者たちに特有の無駄にエネルギッシュな演技ではなく、特に少年少女たちは不思議な感覚を危なげなく表現し、大人役も背伸びせず現実感を的確に見せて好感が持てた。演劇とくに演技を学ぶ学生としてキチンと段階を学んでいる姿を見た機会を嬉しく思う。
不思議な世界に何となく魅入られた90分で、できればもう一度、観たい気のする舞台であった。
その他に手術助手として1年生の石川也哉子・高見誠の2人が出演する。