ニホヒ ワズラヒ

観劇日時/16.11.5. 14:00~15:40
劇団名/亜魂(アジアン ハーツ)
公演回数/第6回公演

脚本・演出・舞台/忠海勇  照明/山本雄飛  音響/倉内衿香
音楽/ラバ@segyar・三島祐樹  演奏/成田凜子
衣装/大坂友里絵  小道具/柳瀬泰二  宣伝美術/温水沙知
制作・プロデュース/3ペェ団 札幌

劇場名/レッドベリースタジオ

抒情詩的な哀切物語

小さなスペースにブツ切れの細かなシーンが、まるで映画のワンショットのように次々と忙しく展開して物語が進められる。それは山の中の小さな村里に閉鎖的に暮らす村人たちの群像だ。
村長のタケ(=梅津学)、たった一人のその男児タケオ(=大谷早生)。タケとタケオの想い出の中に現れる、若くして亡くなった村長・タケの妻の亡霊というか幻想(=栗原聡美)。
庭師の夫を亡くした老婆・ヤエ(=中塚有里)、そのヤエを何かにつけて世話をする花火を造れなくなった花火師で独居老人のマツ(=忠海勇)。ヤエの面倒を見ながら新しい世界へ飛び立ちたい若い娘(=橋場美咲)。
そこへ匂い屋と称する男(=足達泰雅)がやってくる。この匂い屋は自分の創出した独特の香料を嗅がせることで、その「匂い」で人々の大切な想い出を蘇らせるという特技で、主に山村を巡り歩いているのだ。だが実は彼自身が「故郷の匂い」を捜しているのだった。偶然に現れたであろうこの村で匂い屋の男は、村の人たちの複雑で哀しい人生にだんだんと深く関わって行く。
その次々と慌ただしく現れるシーンが過去の経緯をフラッシュバックさせながら物語が展開するので、匂い屋が過去の庭師になったり村長が若いヤエの夫になったり、つまり二役を演じるので混乱する。実は皆、同じような存在だったという象徴なのだろうか?
ラストの匂い屋の想い出の中で、その父を村長のタケが演じるので、これは二役なのか、実は村長の息子のその後が匂い屋だったというのか混乱する。しかしそれはどうでもいいのかもしれない。本当かも知れなしい単なる妄想かもしれない。
匂い屋と言う現実には在り得ない存在を一瞬、夢見させる一刻であったが、ちょっと導入部が冗漫で入りにくいのが気になった。もっと切り込んだ衝撃的なトップシーンだったら、もっと印象が強かったと思われる。