焼け跡から

観劇日時/16.10.29 14:00~15:10
劇団名/希望舞台

原作/西村滋  台本・演出/由井數  演出補佐/安岡和弘
美術/杜江良  音楽/余田嵩徳  
振付/松延まさ子  照明/矢島千浩
効果/廣瀬里奈  舞台監督/高橋康孝  宣伝美術/原みちを
タイトル/篠原鋭一  協力/現代座・宝映テレビプロ・グランツ

劇場名/深川市文化交流ホール「み・らい」

絶望が道連れ、でも振り返れば希望が見えた

昭和20年、東京・上野の焼け跡に4人の戦災孤児のグループ(達平=鏡憲二・文雄=平井愛子・美恵子=本間汐莉・貞夫=今村優太)が、ヤバい仕事をしながら懸命に生きていた。
そこへ軍隊から復員してきた信州の若い和尚・大善(=溝畑栄神)が故郷へ帰る電車を待って休んでいた。大善が4人にりんごを上げると4人は分け合って食べるのを見て大善和尚はその4人に一緒に故郷の寺へ行こうと誘った。
寺では妻・香子(=関根麻子)と母・きぬ(=森ひとみ)が歓迎して、全員が寺で暮らすことになる。
学校の北川先生(=米田亘)は何かにつけて暖かく接する。クリスマスに東京からサンタクロースに扮して孤児の慰問に来た教会の牧師(=井村倫教)とその妻(=西村いづみ)の姿に東京を思い出す。
その後、東京の歯科医・加山(=杜江良)に引き取られて進学することになった達平は、その妻(=高久律子)の取り成しにも関わらず、義父・加山が我が意に従わせ
ようとする自己主張に反乱して家を出て危ない道へはまり込む。
文雄も亡くなった家族との富士登山の夢を忘れられず、寺を抜け出し、上野のヤキトリ屋(=藤田尚希)の所に住み込む。
尋ねてきた寺の母・きぬと孤児仲間の貞夫、美恵子たちは文雄を探し当てるが、新
龍会(=井村倫教・2役)から追われている達平は姿を現さなかった……
何故か話はここで終わっているのだが、発端から中盤までは戦災という人災に傷めつけられた子供たちと復員兵の交流が格調高く描かれて感銘が大きい。
当日パンフに劇団制作部の玉井徳子さんが「絶望が道連れ、でも振り返れば希望が見えた」と書かれているが、まさにその通りのお話が描かれる。その流れでいけば、この時点での絶望の達平は第二幕の希望へと続くのかも知れない。
この物語が、格調高く如何にも新劇風に構築されて隙がなく訴える力も強く、これがいわゆる正統な「新劇」だなと思われる。だが残念なことにサンタクロースのシーン、歯科医のエピソード、そして新龍会の経緯などが中途半端の尻切れトンボに終わってしまっているのは心残りであった。