映画 遥かなる山の呼び声

観賞日/16年9月11日  上映時間/14:00~16:05
製作・配給/松竹  1980年製作作品

脚本/山田洋次・朝間義隆  監督/山田洋次
音楽/佐藤勝  撮影/高羽哲夫
編集/石井厳  製作/島津清

於/アートホール・シネマクラブ

出演者/高倉健・倍賞千恵子・武田鉄矢・
吉岡秀隆・ハナ肇・渥美清 その他

予定調和の名作に痺れる

 久しぶりに映画を観た。観たいTV放映の映画やDVDもいっぱいあるけど映画は1人で観るものじゃないという思い込みが強いのだ。
 この映画のタイトルやスタッフ・キャストなども何となく知ってはいたが僕は今日が初見だった。そしてそれは、「大人の悲恋物語」の典型的パターだった。でもこの、それぞれの人物の秘密めいた過去や偶然の巡り合わせ、シーンシーンの微細な配慮など完璧に構築された一編は確実に私の胸に迫って、もし自分だったら、どうするだろうかという思いをシンクロナイズさせながら感動して観ている。これこそいわゆる名作映画の一つのサンプルであろうか。
 主人公の男女はもちろん、それぞれに関わりのある人たちの謎を秘めた背景が物語の展開につれて徐々に解明されて行く過程が刺激的で目を逸らすことが出来ない。
終映後、主催者が挨拶で「ラストに描かれる二人の今後を示唆する裁判のシーンや護送される列車の中のシーンは田舎芝居風、大衆演劇風で、ここで観客は安心するのです」と語っていた。
 確かにその通りだが、僕自身は、その前のパトカーに自ら乗り込んで行く男と、その次の荒れ果てた牧場の飼育舎の風景で終わりだと思った。その方が観る方が様々な結果を想定して未来の物語を描いてみられる。だからこのラストの二つのシーンは予定調和の蛇足のような気がした……