ブルーマウンテン号の卵と間違い探し

観劇日時/16.8.20 14:00~15:30
劇団名/intro

作・演出/イトウワカナ
映像/古跡哲平 音楽/佐々木隆介
舞台美術/高橋詳幸 照明/菅原渉吾
音響/大江芳樹 舞台監督/アクトコール 宣伝美術/本間いずみ
宣伝イラストレーション/あかなな バッティングコーチ/カジタシノブ
助成/芸術文化振興基金 後援/札幌市
協力/富樫佐知子・川原まみ・野澤麻未・松崎修・
大悪党スペシャル・木製ボイジャー14号
企画・制作/intro

劇場名/ことに・PATOS

出演者/のしろゆう子・小林由香・佐藤剛・
宮沢りえ蔵・おかしゅんすけ・小松悟

崩壊する家庭の物語

 一辺が150㌢ほどの二等辺三角形の台座が頂点を低くし他の2点を高くした、まるで筏のような物の上に、祖母・両親・長男夫婦そして次男の6人が乗っている。つまり、これが、どんな荒海にも決して沈まないブルーマウンテン号なのだ。
 この家族は、おそらく何かの事情、多分次男の問題で地元に居られなくなって、この筏で海へと流れ出し漂流していたのだ。つまり現実的には地元を離れざるを得ずに、知らない土地へと移り住み世間から孤立することになったのだろう。
 この6人は、家族同士がお互いに庇い合うように見えながら、実は自己本位で真実が露出しそうになると、その都度に自己保身の論理によって何とか修正し、その遣り取りが延々と続く。その行き詰まりと感情だけによる無理矢理の解決は、過去の再現でもあり現在の状況でもあるようだ。
 この物語の展開は決してリアルに描き出されてはいない。恐らく全員が波を象徴するような太く細く横縞模様の様々な色のシャツを着ているのが基本だが、それが象徴するように、すべてのシーンは抽象的・象徴的に表現される。
とても印象に残った二つの場面。
 まず全員が統一行動をとる時に、一人二人と段々に増える家族が、縦に並んだり横に並んだり、歩調正しくまるでダンスのように動き回る。
 そして二番目は、雨が降ると全員がこの台座のようなブルーマウンテン号に座り込み、全員を覆い被せるように白布で包むと、それにライトで映しだされる華やかな抽象模様が乱れ咲き散る。この二つのシーンは、この家族たちの心境だろうか。
 やがて彼らは、元の川を遡って地元へ帰り、長男夫婦、両親の順にこの筏という家庭を去り、残った祖母とその愛鳥が去り、次男だけが残る。祖母は大事にしている鳥とだけしか心が通じないのか、彼女はその鳥だけにしか心を許せないのか。

 この家族の物語は、次代にも繰り返されるのだろうか、タイトルの卵とはそのことを指しているのだろうか。間違い探しとは家族の在り方を問うているのだろうか。