北限の猿

観劇日時/16.8.7 14:00~15:20
上演団体名/北翔大学舞台芸術一年目
上演回数/試演会 vol.13

作/平田オリザ 演出/平井伸之
舞台監督/竹中美佳
照明/高橋優衣・坂本菜々子・中村彩子・石川也哉子
音響/久松祐真・工藤花・佐藤潤一朗・佐々木やすほ
装置・美術/久松祐真・高橋優衣・秋元弥生・櫻井奈美
小道具/輪島汐香・高見誠・金田未来
衣装・メイク/工藤花・輪島汐香・櫻田香里・門脇美穂
制作/竹中美佳・佐々木菜々子・仁木わかな・霜沢花朋
宣伝美術/仁木わかな・竹中美佳・秋元弥生

会場/北翔大学カレッジホールPAL6階

出演/久保=高見誠 木元敏子=石川也哉子
木元良二=佐藤潤一郎  竹越=櫻井奈美
戸塚=櫻田香里 佐藤=金田未来
杉浦=佐々木やすほ  清水=門脇美穂
辻本=中村彩子 吉川=霜沢花朋
谷本=仁木わかな

猿の極北、としての人間の存在

 ある大学の研究棟にある控室の一刻。何人かの学生たちや理科学関係の研究者たちが出入りしたり、ちょっと休んでお喋りしたりしている。
 そこへ猿の心理学を研究している地方大学の学生が、この大学の猿の脳の働きを人間に近づける研究と実験の一分野の助手募集に応じて訪ねて来た。
 この部屋での各人それぞれの話題は必ずしも、この教授の猿の知能研究の話ではない。もちろん初めて来た彼女に合わせて、猿の様々な種類や生態や知能の話題にはなるが話の中心にはならない。
 話はそれぞれのグループやカップルや交友関係による重大な相談だったり、他愛もない話だったり、まったく関係のない話だったり……
 結局、一つの物語としてのドラマは起きないのだが、それぞれの個人やカップルやグループの中にはそれぞれのドラマが芽生えたり沸騰寸前だったり破滅へ向かっていたりしているらしいことは感じられてくる。
 特に浮気男に妊娠させられた挙句に振られそうになった女が、ラストで椅子に登り隣の椅子に飛び移った後で二つの椅子の間隔を広げて、やや躊躇していたとき何気なく入って来た友人が心境を察したか、上半身を反り返えらせて両手で胸を叩き何事かを唱えると、椅子の上の彼女も、それを真似して反り返り両手で自分の胸を叩き、何事かを唱えて、二人で去るシーンにドラマのラストを重ねあわせて観ていた。

 「北限」とは「極北」から考えて、猿の極北としての人間の存在があるのかなと考えてもいた。この舞台は平田オリザ作だから、5日に観た「劇団アトリエ」の『学生ダイアリィ』と構成が良く似ていたように思った。