学生ダイアリー

観劇日時/16.8.5 20:00~21:40
劇団名/劇団アトリエ

脚本・演出/小佐部明広  舞台/米沢春花
照明/芋田桃子  音響/渥美光
衣装/新谷菜摘  制作・宣伝美術/山木眞綾
会場スタッフ/蝦名里美・小川しおり・
加納絵里香・ 川原まみ・
竹内麻希子・ 丹野早紀・
はまだなつこ・松葉留奈

劇場名/シアターZOO

無意識の恐怖

 ある大学の年中行事である大きなイベントに参加する学生たちや卒業生たちが、その控室に三々五々と出入りする。
 物語の展開は、その場に居合わせたグループの人たちのリアルな実態描写であり、ドラマは起きない。この設定も展開も劇団・青年団の平田オリザの舞台と酷似していて過去に何度も観た青年団の舞台? と錯覚しながら思い出しながら観ていた。
 ここに出入りする彼ら・彼女ら学生たち・卒業生たちは、いま目の前でやるべき事には一生懸命に力を入れようとするが、大袈裟に言えば、それが歴史的・社会的にどういう影響があるのか、何をもたらすのかということにはほとんど関心がない。刹那的な思いがあるだけなのだ。
 いちばん、それが強く現れたシーンは、中国からの留学生がアイドル的な女子に問うたときだ。この女子学生は金持ち男の散歩の相手をする「散歩デート」のバイトで巨大な収入を得ている小金持ちなのだ。彼女は中国から留学している男子学生から「日本と中国とが戦争になったらどうするか?」と聞かれたとき、一瞬キョトンとした後、平静を装って何となく他愛のない日常会話に話を移したのだった。
 おそらく若い人たちの日常の中には意識して大きな問題をはぐらかすのが常識であり、無意識の中に事を荒立てないようにしているのだろうか。
 会話の中に何度も北朝鮮の核弾頭が北海道を狙っているという一種のデマが拡大されて話し合われようとするが、だれも本気でまともに取り合わない。それで死んだら、そして世界が終われば面倒臭くないからというニヒリズム……
 ラストシーンで停電すると、一人残った女がイヤホーンで音楽を聴いているのだが、停電は関係ないとばかりにスマホに見入る。その明りの照り返しに浮かぶ彼女の顔……入ってきた男の足音には気付かない。イヤホーンで耳を塞いでいるから聞こえないのだが、実はその女は意識的に無関心を作っているのかもしれないし、その裏に透けて見える無意識の恐怖がこの舞台を象徴していたのだった。

 出演者/ 植村望=柴田知佳   大橋実里=びす子  篠原幸恵=山崎亜莉紗
       蔵元優太=柴野嵩大  重野誠=村上友大  柳田卓哉=信山E紘希
       谷川信平=井上嵩之  郭暁偉=有田哲