四谷美談

観劇日時/16.7.30 14:00~15:50
劇団名/yhs

脚本・演出/南参  音楽/Rz×Shoj
主題歌/テツヤ  舞台美術/高村由紀子
舞台監督/高橋詳幸 照明/上村範康
音響/橋本一生 映像操作/伊勢川明久
衣装/佐々木青 特殊メーク/吉田ひでお
ヘアメイク/喬元珪 小道具/後藤貴子
宣伝美術/クスミエリカ 題字/大高絵里 イラスト/佐藤杜花
制作/水戸もえみ

劇場名/琴似 コンカリーニョ

即物的な欲望による混乱が現状を象徴する

 現代の歌舞伎役者・民谷伊右衛門(=小林エレキ)は、人気抜群の先代・左門に見込まれて娘の祝(=曽我夕子)と結婚し、いずれ名称を継ぐと言われていた。
 ライバルの佐藤予茂七(=能登英輔)は、祝の元恋人であるが予茂七には現・恋人で女優の彩吹紬(=最上朋香)がいる。だがこの彩吹紬は、元・歌舞伎役者で現在は予茂七の付き人である中島直弼(=櫻井保一)とも退廃的な男女関係にある。
 こういう複雑な男女の愛憎関係と上下関係の中で伊右衛門は、苦悩の果ての殺しの妄想や相手の排斥の詮索に狂う。
 こういう暗い関係の押し合いの経過や弾けそうに狂的な展開を描写し、切羽詰まった男女の破裂寸前の心情が強烈にリアルに迫ってくるのは他人事とは思えない。これは個人同士の関係だが団体や集団間や、あるいは大きく国と国との関係の拗れだとしたらどうだろうか?
 世界はいわば、そういう時代に落ち込んでいるのかも知れない。この舞台もマネジャー・梅(=上總真奈)との確執、芸能事務所(社長=青木玖璃子・専務=長麻美)の内紛と女同士の愛の縺れ、など複雑な様相をみせるが、これも現実社会の一つの象徴ともいえる。
 ともかくこの舞台は、その場の具体的な人間同士の心情が、生で荒々しく描写され、それを観ている時点では即物的で興奮の瞬間のままに観るしかなく、後でその騒動は一体何だったのかと奇妙な感慨を持つのだった。

その他の出演者/
按摩・宅悦=小林テルヲ 
ツイッターする人たち=紀戸ルイ・佐藤杜花・宮本暁世・市場ひびき・西村颯馬