華々しき一族

観劇日時/16.6.4 14:00~16:00 (途中休憩10分)
劇団名/FAP′S
公演形態/札幌市民劇場 第1375 FAP′S企画公演
主催/札幌市民芸術祭実行委員会・札幌市・札幌市芸術文化財団
主管/FAP′S企画公演

作/森本薫 演出/森一生 
舞台監督/広光洋一  美術/福田恭一
照明/鈴木静悟 音響/西野輝明 
制作/FAP′S企画公演

劇場名/ターミナルプララザ・ことにPATOS

物語が現代に言及するもの

映画監督の鐵風(=城島イケル)は男子・昌允(=渡邊秀敏)と女子・未納(=松浦ひかり)の二人の子を連れて、美伃(=本吉夏姫)を連れた舞踊家の諏訪(=小山由美子)と再婚した。だからこの3人の子は義兄妹で、年齢は昌允・美伃・未納の順になるが、昌允と美伃に血縁関係はないのだ。
鐵風の弟子である須貝(=本多竜二)も、この家族と同居して生活を共にしているが、須貝はいよいよ明日が一本立ちの初日だった。
その日、須貝は元気で活発な未納と雑談していた。それは二人を取り巻く堅実で現実的な性格の昌允と静かな美伃との複雑で微妙な関係、それぞれの心情の行き違いが徐々に表れる。しかも須貝の諏訪を思う心も絡んでくる。
立場を悟った須貝は、一同が自室に去った後、昌允だけに打ち明けて静かにこの家を去る。
昭和初期の当時のブルジョアの混み入った一家5人と親交の深い男たちとの間に起こった愛憎心理劇。この物語が現代に何を言及するのだろうか? 人と人との関係の中であからさまに出来ない、あるいはしてはいけない秘密を、どう処理するのか、あるいはどう守るべきなのか、という人間関係の基本を問うているのだろうか?
冒頭、若い二人が豪華な初夏の洋間で、半分本気で戯れているシーンが、何だか精一杯、力一杯に形だけを作っているように見えて大いに興を削ぐ。
だがその後、諏訪が登場すると、さすがに舞台には強いリアリティが生まれ、鐵風とのコンビで絶妙の雰囲気が醸し出され、この人たちの苦悩が静かにしかし強く表出されてゆくのだった。