サウンズ・オブ・サイレンシーズ

観劇日時/16・4・16 14:00~15:25  
第2回目の観劇/4・18 20:00~23:25
劇団名/弦巻楽団
 
作・演出/弦巻啓太  舞台監督/上田知  舞台美術/川﨑舞
照明/山本雄飛  宣伝美術/本間いずみ  制作/小室明子
新人/畦地琴美・相馬日奈・安喰果菜子  協力/富樫佐知子・大江芳樹

劇場名/シアターZOO

ミステリアルな人間関係

たった二人だけの姉妹、姉・つばめ(=塩谷舞)は、父が亡くなって一人残された老いた母親の世話をするために、母と一緒に大きな家で静かに暮らしている。
妹・つぐみ(=深津尚未)は、幼い頃から母に疎外されたと思い込み、高卒と同時に独り立ちし、今は塾の講師として生計をたて、高校教師の渉(=深浦佑太)と将来の結婚を夢見ながら同棲している。
世話焼きでお節介で積極的なつぐみは、一人暮らしで侘しい姉を勝手に心配し、渉の先輩であり同僚でもある妻に逃げられた男・集(=温水元)を姉に紹介し世間を広げさせようと思い、渉と図って一計を案じる。
渉とつぐみ、集とつばめの二組のカップルを巡る展開がテンポよくコミカルに演じられるのだが、一つ一つのシーンが何度も繰り返され、その都度そのシーンの中で語る台詞が微妙に違ってくる。挿入されたり削除されたり変更されたり……つまり、それは、相手の人物の視点から見ると、同じシーンでも微妙に状況が違って見えているというわけなのだろう。
その巧みな作劇術に嵌って、この4人の心情のすれ違いに魅入られる。4人は4様の秘密を抱きながら、この二組のカップルはハッピイエンドを示唆するのだが、その秘密を知った観客はどう思うのだろうか? 観客それぞれの私生活の中にも何かの疑惑があるのだろうか? その秘密保持こそが人間関係を維持する上での最低限のルールなのだろうか? と納得せざるを得ないのだろうか?
それぞれのシーンの時間が、過去・現在と複雑に交錯し、場所も次々と入れ替わるのだが、全く無理を感じさせないことにも演出・演技の力を感じる。

同じ作者の『死にたいやつら』が、自分の感情を違った形で表現するという点では似たような表現法だろうが、この二つの舞台の決定的な違いは、今日の舞台はそれぞれの心情を自分に都合よく受け取るのであり、『死にたいやつら』は、自分に都合の良い妄想を主張するという、人間の心情の表と裏を現わしているような感じなのだ。