幕末サムライヌード

観劇日時/15.12.19 13:00~14:50
上演団体名/札幌ハムプロジェクト
公演名称/ハムコレクション2015

脚本・演出/すがの公 照明/竹屋光浩 音響・イラスト/すがの公
宣伝美術/井嶋マキ子

劇場名/シアターZOO

出演者/
温水元・飯野智行・明逸人・有田哲・村上友大
松田優哉・魂魄そうる・ 倖田直機・石川哲也
田中温子 ・天野ジロ・フルサキエミ・渡辺ゆぱ

ニヒリズムを表す「ヌード(何もない)」表現

予備校の講師・坂本龍人は、現実逃避の想いが募ったかのように、政情混乱する幕末に妄想が飛んで坂本龍馬との二重人格的な存在となる。
現代に戻って、自分は何をやっているんだろうという思いの中で、学生たちにいちいち「これはテストに出ません」と言いながら、そういう細部にこだわる。
この幕末の混沌とした群雄割拠の騒がしさと現代の人たちとを、14人の出演者が一人平均五役以上も受け持って、このニヒルともみえる物語を行ったり来たりで大車輪に演じる。
特筆すべきは、この演出法だ。いわゆるエアー演技で全員が真っ黒なタイツ姿を基本に役によっては真っ黒な上着を羽織ったり真っ黒なミニスカート風だったり多少の異相はあるが基本はすべて真っ黒だ。
もちろん舞台装置は全くなく、これも真っ黒な壁面と舞台中央には高さ20センチほどの台が置かれ、上手・下手そして奥には1㍍ほどの空間があり、出番のない役者は常にそこに待機する。そして声をそろえて効果音を発声する。しかもそれは雰囲気描写の無機質音ばかりではなく、人物たちの様々な感情、例えば「イヤイヤ」「ドキドキ」「ガンガン」「ソワソワ」という類のものだ。そしてそういう客観的描写がニヒリズムの表現に大きく寄与しているとも思われるのだ。
この表現はいわゆる「ヌード」が「何もなしに表現する」という、ハムプロが開発し最近一つの方法論として成長しつつあると思われる。