星女郎

観劇日時/15.11.18 15:00~16:40
劇団名/実験演劇集団 風蝕異人街

作/泉鏡花 潤色・演出・照明・美術/こしばきこう
音響操作/佐藤慎哉 ビデオ撮影/園部一也
写真撮影/渡辺保 舞台/夢虫
Special Thanks /小池瑠莉・高岡啓次郎 
協力/岡谷友美・佐藤駿・田邉幸代・秋山倫瑠
制作/実験演劇集団 「風蝕異人街」・平野たかし

劇場名/ターミナルプラザ ことにパトス

作家や女たちの心情の世界

性を売る女郎が純潔の象徴の星の心情を持つ女である物語。昭和初期の雰囲気を持つカフェバー、赤黒く複雑な格子模様の壁面には西欧女優たちのブロマイドが一面に貼ってありジャズ音楽が流れ、売出し中の青年作家(=倖田直機)が下駄ばき姿で呻吟している。
昼間から飲んでいるママ(=三木美智代)と、その姉と称する初老の女性(=堀紀代美)との他愛のない雑談。客が居なくて廃業寸前の、このカフェに突然、大きな荷物を背負った老人(=斉藤秀規)が入ってきて「ジャロ」とだけ言ってキリマンジャロを注文する。青年作家は、その老人を死んだ伯父だと思い込む。作家はかつて、その伯父から雪女郎の話を聞いていたのだ。伯父は自分も自分の妹である作家の母も死んではいないと言う。死んだと思っているのは甥である作家の妄想だと言う。
カフェの壁面である中幕が割れて神秘な情景が現れ、そこで作家はママの別人格に惹きこまれて行く。
リアリティの強いカフェを舞台にして、その奥に突然現れる作家や女たちの心情の世界を表現したのは、鏡花の世界を百年後の現実世界に持って来て夢幻の心象風景として表現しようとしたのは卓見だと思う。だがリアリティの強いこの世界も現代から見れば時代劇だ。思い切って2015年の世界に描かれなかっただろうか?
観ていてとても気になったのは全体に装置・衣装・小道具などの物質的な造りが雑なのだ。一番気になったのは中紗幕の奥で琵琶や太鼓を演奏する以外の人たちの無駄な動きが丸見えになること、照明のonとoff の切れ目がだらしないことだ。これらが雑だと幻想シーンが逆に嘘っぽくなって演劇の魅力が激減してしまうのだ。
その他の出演/国門綾花・西崎鼓美・村場踊(=篠笛・太鼓)・薩摩琵琶/奥田拓