じゃぱどら 愛欲編

観劇日時/15.10.11 14:00~15:30
企画/清水企画
上演形態/シアターZOO企画公演【Re:Z】 

演出/清水友陽 照明/清水洋和 
舞台/中川有子・ワタナベジュンイチ
衣装/高石有紀 制作/岩田知佳・梶原芙美子・小林テルヲ
協力/劇団ひまわり札幌

劇場名/シアターZOO

 

演目1  恋愛病患者
作/菊池寛

妹娘・久美子(=下島小麦)の恋愛を巡って、一過性の病気だから荒療治をすべきだという頑固親父(=赤坂嘉謙)と、神聖な精神的成長だから優しく見守るべきだという兄息子・哲夫(=中塚有里)との衝突の間で、相手との結婚を前提に穏便に収めようとする姉婿・賢一(=畑山洋子)。だが経済力の全権を持つ父に逆らえず、泣き寝入りする久美子。
他に母・さだ子(=小林利律子)、姉娘・敏子(=奈良有希子)。この二人は男尊女卑の時代では、ほとんど出番が無く、ウロウロしているだけだ。

演目2  恋愛恐怖病
作/岸田國士

恋愛に踏み切れないことを屁理屈で逃避する男(=南淳)。友人として唯一付き合っている女性(=高石有紀)は、踏み切れない男に業を煮やして、別の男(=前田透)に飛び込む。新しい男は、前の男の承諾を得に来る。恐怖病の男はそれでもまだ自分の心が分からないのか度胸がないのか?

演目3  兄の場合
作/菊池寛


妹・久美子の件から6年後、久美子は心の傷が忘れられず、未だに独り身だ。そのとき女性初心者の兄・哲夫が、あばずれ芸者と心中未遂事件を起こす。今回も姉婿・賢一は何とか手切れ金で上手く収めようと走り回る。だが頑固親父は久美子のその後を見ていて、恋愛は一生を左右する大病だから荒療治をせずに根気よく暖かく見守るべきだと方向転換していた。




人間の想いの厚さ薄さを分かりやすい「恋の感情」という局面に絞って表現した舞台。現代において「恋」そのものは、もっと自由な存在だけど、人間の精神や、それに伴う行動の象徴として考えると、とても様々な現代的で強烈なテーマ性をもっているとも考えられる。
階段状だけの舞台装置で、全員が客席を向いて様式的な演技をすること、兄と姉婿が女優であること、「恋愛恐怖病」のヒロインが必ずしも女性的魅力の強い女優でないこと、などに逆説的な意図が感じられ、明確に観客を迷路に陥れる演劇の魅力と快感を覚えたのだ。