まだきっと月がある

観劇日時/15.10.3 19:00~20:20
劇団名/含有複合団体 fukumaru

作・演出/木山正太 演出補佐/アンディ 
衣装/徳山まり奈 照明/平賀友美
音響/山口愛由美 宣伝美術/安田せひろ 舞台美術/及川亜耶

劇場名/BLOCH

出演者/藤谷真由美・茎津湖乃美・高橋雲・石鉢もも子・伊勢川明久・
栁澤知美・ヨシダレオ・佐藤駿・松田優哉・三浦雄斗

前へ進む若いエネルギー

東西に大きな壁で隔てられた架空の国の物語。勢力争いをしている中に、力ずくで相手を倒すよりも、どちらが先に月へ到達できるかを競うようになる。そこから始まる話の中心は、東の国の不幸な家庭の娘が何とか西の国へ行きたいと熱望する。
一方、西の国の自意識過剰な中学生は、どうしても月へ行きたい。この二人を中心に、それぞれの人たちの生き方、幸せを求めて右往左往する日常を描く。
沢山の群像を含めて膨大な集団の登場人物、次々と転換する場面をシュールに象徴的に群舞のような表現でエネルギッシュに目まぐるしく展開する。10人の出演者が一人7役から14役を激しく演じるが、すべて舞台装置も小道具も全くなく、エアー演技だ。主役以外は皆同じような衣装だし主な役も群衆の時は衣装も変わるから誰が演じているのか分からない。舞台中央に斜めに建てられた頑丈な壁以外は何もなく、劇中で使う教室のイスと乗合バスの座席だけは演者が自分で設置する。
『まだきっと月がある』というタイトル通り、この舞台はいつも前を向いて生きていく人生に対する応援歌なのだろう。
主役のアグラは東の国の人で、中学中退のまま母のいない家族を養っていたが、欺瞞の世界に絶望し、西の国の宇宙飛行士・空芝ジヨージに恋をする。
ジョージもどんな悪条件の中でも夢を捨てない。同級生のムツオは中学生のときにやはり絶望して自殺したのだが、その前に自分の肉体をアンドロイドに改造して徹底的に彼女を守る役割だ。
荒唐無稽の物語だけど、「前へと進む」というキーワードでエネルギッシュに演じられる若い舞台に大きな共感をもてた。

『太陽と月』を含めた今日の二作品は、どちらも若いエネルギー溢れる好感の持てる舞台だったのだ。