死にたいヤツら

観劇日時/15.9.21 17:00~18:25
劇団名/弦巻楽団
上演形態/秋の北海道ツアー

作・演出/弦巻啓太
舞台監督/高橋詳幸 照明/相馬寛之 音響/大江芳樹
照明&舞台助手/栗橋佳菜子 制作/小室明子

劇場名/美唄市民会館

死を装ってまで必死な金の亡者

近松研究の権威である大学教授が病没する。その49日法要に集まったのは、未亡人(=小林なるみ)、その妹(=深津尚未)、教え子の女子学生(=神山このみ)、そのボーイフレンドで同じく教え子の学生(=有田哲)、故人の同僚で欧米文学の教授(=小野優)、そして家政婦(=柴田知佳)たちの身内ばかりが、しめやかに故人を偲んでいた。
そこへ故人からの遺言書を託されたと称する弁護士(=温水元)が突然に訪ねて来る。遺言書には、「たった一人の愛する人に土地・家屋以外の全財産を譲る」と書かれているのだが、肝心の相手の姓名が書かれていないので、それを確認に来たと言うのだ。
その二億円という金額を聴いた一同は、俄然、そのたった一人とは自分であると名乗り始める。その都合の良い自分勝手な状況説明が一人ずつ描かれるのだが、遺言の中のわずかなヒントを頼りに実に巧妙に説明する。金銭欲丸出しの本性を滑稽にあくどく描写されると満場の皮肉な笑いは絶えない。遂には同僚の教授までもがホモセクシャルだと名乗って参画する。
近松研究者の愛人だからというので、全員が近松作品の主人公になぞらえて、どんな心中を望んでいたかまでも実演して奮闘する。それぞれの相手役である教授は弁護士役の温水元が演じる。
やがて力尽きた4人が去ると、この一件は未亡人が知人の俳優さんに頼んで弁護士の役を演じてもらい、人たちの本心を知りたかった仕掛けだったことが分かる。途中で教え子だった彼女の金銭欲の心底を知ったボーイフレンドもその仕掛けに加担して一役買ったのだった。
すべてが終わった後で、彼は未亡人に、「皆さんは教授に心中を持ちかけられたといってますが、貴女がもし心中を迫られたら、どうなさいますか?」と聞く。「私はずっと一緒に生きたかった。」と静かに答えるのだった。
06年11月の『遊戯祭』で最優秀賞を受賞した作品で、『続・観劇片々』第15号にその観劇記を報告している。その後14年の「札幌演劇シーズン」でも再演され、それは『続・観劇片々』第46号に報告している。

今回は、その時とスタッフ・キャストなど一部変わった以外に、台本・構成は全く変わらず、その面白さは様式化されたオーバーアクションの演技によって一段とレベルアップしたと思われた。