蒸発

観劇日時/15.8.8. 18:00~19:20
劇団名/intro
公演形態/札幌演劇シーズン2015夏

作・演出/イトウワカナ 映像/古跡哲平
音楽/佐々木隆介 振付/東海林靖志
音響/近松祐貴 照明/菅原省吾
舞台デザイン/川崎舞 美術製作/高橋詳幸
舞台監督/橋本一生 宣伝イラストレーション/針 
宣伝美術/本間いずみ
制作/富樫佐知子 
協力/水戸もえみ・佐藤紫穂・伊藤咲・
さっぽろ天神山アートスタジオ・劇団アトリエ・劇団オガワ・静と動・
大悪党スペシャル

劇場名/ターミナルプラザ ことにPATOS

交わらない心情の過激な身体表現

居間らしい空間、灰色に塗られた背景の壁の部分には浅い階段様の突起があり二階へ登れるようにも見えるが、ところどころに陶器などが置かれているから飾り棚のようにも見える。部屋中に白っぽい容器のような物、バケツや丼、小皿などが置かれ、開幕前からポツンポツンと本水の雨だれが落ちている。
何年ぶりかでこの家の二男夫婦(=潮見太郎・菜摘)が訪ねて来て、この雨漏り状態の実家に驚く。一足先に来ていた独身の兄(=佐藤剛)は、もう馴れたという。老犬・成田(=のしろゆう子)だけが同居する一人暮らしの老母(=宮沢りえ蔵)は、お勝手の雨漏りが激しいので雨合羽を着ている。従兄(=松崎修)や近所に住む男(=有田哲)などが次々と訪れる。
この6人が過去の様々な確執の経緯や現在の生き方を巡って激論する。だがそれは具体的に表現されるわけじゃない。それぞれの心情を何となく遠回しに、でもその度に身体は無意識に狂ったように激しく何ともいいようのない極端な動作で動き回る。
話は連絡の着かなかった末妹の回想に至って、この食い違った想いのクレージィ・ダンスの衝撃は頂点に至る。激しい雨の音と背面の壁に映る雨の映像がダンスに共鳴するように次第に激化する。最後に冷蔵庫から取り出したのは長兄が用意したバースディケーキで、今日はその妹の誕生日なのだ。今宵は消息不明の、皆から愛され、でも疎外されたその妹の30回目のお祝いの席だったのだ。
具体的ではなく過激に拡張表現された、その心情の技法に強く圧倒される。東海林靖志の振付が普通ではない。

犬は、ときどき人間の声で、この何とか努力しても相交わらない人たちの心境と状況とを解説するのだが、それが邪魔にならず、観ている人に柔らかく届く役柄の面白い存在だった。