幕末サムライヌード

観劇日時/15.8.1. 19:40~21:50 (途中10分の休憩)
主催・制作/札幌ハムプロジェクト
上演形態/エンゲキダイエット2015

脚本・演出/すがの公 照明/岩ヲ脩一 宣伝美術/天野ジロ
制作/井嶋マキ子・佐々木陽子・米沢春花・漆澤朋美

劇場名/コンカリーニョ

出演/東海林靖志・坂本祐以・熊谷嶺・
石川亨信・勝見慧・遠山くるみ・村上友大・
天野ジロ・フルサキエミ・渡辺友加里・高橋雲・すがの公

ヒーロー絶対視に対する異議申し立て

予備校の日本史講師のいい加減な幕末史の講義。この講師は何時の間にかタイムトラベルして坂本竜馬になっているらしい。喧噪の時代の竜馬は、新選組の面々やグラバー卿まで絡んだ展開の中で懐疑的な人物になっている。
この物語を中心に12人の出演者が次々に入れ替わり立ち替わりに様々な役を演じるので混乱するのだが、その混乱を狙っているような気もする。しかも全員が黒装束で、いわゆるエアー演技で小道具大道具は一切何もない。しかも出番のない時には上下の舞台隅に別れて座り込み待機している。そして効果音としての擬音は勿論、いわゆる心理的な音、例えば「ドキドキ」だとか「ユラユラ」「ヒヤヒヤ」なども全員で音楽のように高低・長短を付けて合唱する。それらはすべて新しい表現法として、ハムプロがずっと練り込んできた形が出来上がりつつあることを感じた。
現代の予備校講師の竜馬が、時に応じて吐く「これはテストには出ない」という台詞は、英雄の些細などうでも良いような如何にも人間臭いエピソードで、真偽は不明だが面白い着眼点で、ヒーロー絶対視にたいする異議申し立ての提議が新鮮で画期的だった。
東海林靖志はもちろんだが、坂本祐以の東海林に劣らないような身体機能の切れ味の良さと鋭い表現力に驚嘆した。そしてラストシーンで群像の中の坂本祐以がキッと彼方を見据える、引き締まって整った顔面の魅力が印象的であった。
今年の6月に観た札幌座『ルル』の坂本祐以が恐怖さえ感じさせる存在で強く印象に残ったが、今回の坂本も、それに劣らぬ強烈な存在を示して惹きつけられた。
ヌードとは何を意味しているのか? 裸身ではなく、エアー演技といい人の声の効果音といい、精神を裸にして真の意味を問おうというのだろうか?