たぬき

観劇日時/15.7.20。 17:00~18:15
劇団名/清水企画
公演回数/第19回公演

作・演出/清水友陽
舞台/中川有子・ワタベジュンイチ 制作/岩田知佳・梶原芙美子
劇団員/高石有紀・小林テルヲ

会場名/オノベカ

シュールな世界の出来事

時はおそらく札幌冬季オリンピックの直前ころだと思う。札幌の繁華街の場末の冬のボロ飲み屋に一人の放浪の若い女性・アカネ(=中塚有里)が住み着く。彼女はダイエットに凝り固まり、寒さを防ぎながら細かなカロリー計算をしながら、この店の美味しい物を食べて飲んで、エネルギー消費のために人力発電機を回し続ける。
この廃業寸前の店のおかみであるソメさん(=畑山洋子)と常連の客・ヒデさん(=赤坂嘉謙)は現実の人物らしいが、その二人にはアカネの存在が見えないらしい。
だが、この店へ現れる二人の女性・ツキコ(=奈良有希子)とホシコ(=下島小麦)にはアカネとの意志疎通が出来るのだ。
つまりアカネは亡霊なのか、あるいは現実の二人であるソメさんもヒデさんもツキコもホシコも、アカネの妄想の中の人物なのか、現実の二人との会話はリアルであるのにツキコとホシコとの会話は形式的であり人工的である。
二人の女性の中、ホシコはアカネの母であったり娘であったりする。ツキコはアカネに性的愛情を持ち具体的に身体で挑発したりする。アカネは付かず離れずの態度を保つ。
札幌オリンピックのために、この地は再開発されて大きなホテルが建つ計画だ。男・ヒデオはその中心人物らしい。やり手だから金の力でアカネを誘惑する。アカネもそういう裏の世界を覗き見するらしい。
繁華街はキツネが跋扈する昼の世界と、タヌキの出没する夜の世界があるという。アカネはいつの間にか現実の二人が住むタヌキの世界に引きずり込まれて行き床下を掘って種を撒く手伝いをする。無駄なカロリー計算と人力発電機を回すのは忘れたのだろうか。
具体的に説明すると味が薄くなるのだが、実際の舞台は現実と妄想との虚構が入り混じって不思議な時間と空間を創り出す。

中島公園に近い、現在も営業中の喫茶店と同じ棟にある旧い民家の10㍍×20㍍ほどの空間で、その1/3くらいが舞台で天井はぶち抜かれて二階が無くなっているから意外とタッパの高い大きな空間だ。その舞台に使っている空間の上部が手摺に囲まれた廊下は、まるでバルコニ-のようで見上げるような魅力的な空間だが、ここが使われなかったのは残念だった。