音楽劇 わが町

観劇日時/15.7.9. 13:30~16:30 (途中休憩15分)
劇団名/俳優座劇場プロデュース
公演形態/旭川市民劇場7月例会

作/ソートン・ワイルダー 翻訳/鳴海四郎 演出/西川信廣
音楽/上田亨 作詞/宮原芽映 
美術/二村周作 照明/桜井真澄
音響/山北史朗 衣装/山田靖子 ステージング/室町あかね
歌唱指導/満田恵子 
舞台監督/泉泰至 演出助手/河田園子
宣伝写真/玉川豊 宣伝美術/ミネマツムツミ 
企画制作/俳優座劇場

劇場名/旭川市公会堂

平凡な人たちの平凡で豊かな、でも短かった人生

18世紀初頭、アメリカ、ニューハンプシャー州の小さな田舎町グローヴァーズ・コーナーズに住む、医師・ギブス(=瀬戸田郁)ギブス夫人(=麻乃佳世)の息子・ジョージ(=粟野史浩)は、隣家の地方紙編集長・ウェブ氏(=川井康弘)とウェブ夫人(=花山佳子)との娘・エミリー(=土屋裕子)とは同じ高校の仲の良い同級生だった。そこでの二人を取り巻く穏やかな日常の風景が描かれる。
高校卒業を控えて二人は愛の確認をする。二人の感情の交錯は若さが混乱させるのだが、いろいろあって、結局は盛大な結婚式が挙げられる。
八年後、突然に若妻が一児を残して早逝する。人生に大きな悔いを残したエミリーは死にきれない。14年前の誕生日の我が家にタイムスリップするが、家事に忙しい若いこの母は、全く幽霊のエミリーに気が付かない。 
エミリーは、それが自分に与えられた一つの人生だと悟ったように、残された人たちの幸せを祈って静かな永遠の眠りに着く。彼女の墓の前にはひれ伏して泣き続けるジョージが居た。
全編がピアノのBGM演奏で、要所々々で合唱とソロ歌唱によって演じられる。雰囲気を創る効果は大きいのだが、情緒過剰で歌詞が意味不明瞭な部分が多く、いっそ普通の台詞で聞きたいと思った。
その他の出演者。
  レベッカ・ギブス=保可南 ソームズ夫人=岡のりこ 
  サイモン・スチムソン=金子由之 ワレン巡査=藤側宏大
  ジョー・クローエル+ウォーリー・ウェブ+サイ・クローエル=茜部真弓
  ハウイ・ニューサム+ウィラード教授=金成均
  進行係=原康義 ピアノ演奏=佐藤拓馬
13年の9月に「フライングステージ」が上演した『OUR TOWN shinjuku 2-chome』
を観た。『わが町』の翻案劇である。その時の感想記の一部分が次の一文である。
『続・観劇片々』42号より。

          ☆

この劇団「フライングステージ」は、男性の同性愛いわゆるゲイをカミングアウトした人たちの劇団である。
この町・新宿2丁目に産まれて生きて生活する人たちと、疎外されて集まって新宿2丁目に住んで生活しているゲイの人たちの、この街への愛着が、どんな街にもどんな時代にも厳然としてあることを、その街の平凡な日常の生活を描くことによって、それが生きている大きな証でもあるということを、この独特な街を通して問いかけた優しい物語であった。

         ☆

この舞台が、これまでに観た『わが町』の一番に印象の強い舞台であったことを、今回再認識したのだった。