ルル

観劇日時/15.6.28.  18:00~19:40
劇団名/札幌座

原作/フランク・ヴェデキント『地霊・パンドラの箱―ルル二部作』  
翻訳/岩淵達治 演出/橋口幸絵
音楽/嵯峨治彦 振付/東海林靖志
照明/秋野良太 音響プラン/橋口幸絵
音響オペレーター/市川薫 衣装/アキヨ
美術/高村由起子 舞台装置/アクトコールKK
映像プラン/すがの公 舞台監督/佐藤健一
宣伝美術/若林瑞沙 写真/yixtape 幕絵/杉吉貢
道具協力/gentle tree 託児協力/バナナのOYAKO 
ディレクター/斎藤歩
プロデューサー/平田修二・木村典子 
制作/松本智彦・横山勝俊
主催/北海道演劇財団・NPO法人札幌座クラブ

劇場名/シアターZOO

諦観にも似た一種の恐怖

圧倒的に女性という性的魅力を持った女性ルル(=坂本祐以)。本能的にその魅力を縦横に放出して、すべての男たちに対し、対されたすべての男たちは、そのために破滅へと追い込まれる。その経緯は男女の関係を象徴的に表現してはいるのだが、すべての人間関係や集団や大きくは国家間の関係までをも象徴しているような気がする。
 前半は、そのおぞましいまでの男女関係に、人間の一種の業を感じて自分だったらどうなるだろうと怖くなるのだが、後半になってルル自身が破滅してゆく展開には恐怖を通り越して、人間あるいは女性という存在そのものさえ否定したくなる、という心境にまで陥った。
その繰り返しは想像を絶し拒否反応さえ出て、止めてくれ! と叫びたくなるが目を放すことも出来ない。男たちやルルが大荒れするとき壁が揺れたり、飛び散る血が嘘くさいのが現実を知らせてくれて、やはり虚構の世界だと目覚めさせ、やっと何とか落ち着く。それほどルルを演じた坂本祐以の体当たり的演技はまさに迫真的で怖い存在でさえあったのだ。
エキセントリックなダンスシーンと破壊的な音楽が表現する、人間のある種の本質を描いたこの恐怖の舞台は、ずっしりとわが心の中に重い錨を落とし込んで忘れられない舞台になったのだった。
その他の出演者/清水友陽。すがの公・山本菜穂・木村洋次・市川薫・亀井謙・渡邉豊大・山口健太