聞き耳カフェ その4

観劇日時/15.5.10. 13:00~14:40
劇団名/エンプロ

公演回数/プロデュース公演  Vol.16
脚本・演出/遠藤雷太 制作協力/水戸もえみ・長原桂 
宣伝美術/大塚ちかこ

会場名/Pasteria Trattoria Dino

今日の劇場は喫茶店で4人×10卓=40席くらいの広さ、奥一面が鏡張りだから実際よりはずっと大きく感じられる。大衆食堂か定食屋さんみたいな飾り気のない喫茶店である。
中央のカウンター寄りの4脚の椅子のあるテーブルに予約席の札が置かれていて、これがおそらく舞台なのだろうと思い、そのすぐ近くの席に座る。もちろん自由席だが予約で定員の観客だけだ。

1、ゴーストライター珠美  この篇の脚本/遠藤雷太 導入部
一人の女客・珠美(=山下カーリー)が入って来る。彼女はゴーストライターで、今日が締め切りの原稿を書かなければならない。幽霊話の噂を聞いて友人(=後藤貴子・大沼理子)が勤めるこの喫茶店へネタ探しに来たらしい。この二人の会話が全体を通しての枠になっている。次の客が来たので珠美をカウンターに残して店員は去る。

2、マリアージュ有象無象  脚本/遠藤雷太 所要時間/20分
親友の二人の女性(=金子綾香・三宅亜矢)の一人は結婚直前で、もう一人は離婚経験者だ。離婚経験者は相手の男を呼び出して不安を感じる親友に代わって男を詰問する。マリッジブルーをネタにした一場の物語。マルチとマルチーズとの食い違いが鍵らしいのだが、僕には意味不明だ。

3、ピックアップ生首  脚本/深浦佑太 所要時間/25分
この店に親友から呼び出された男(=村上義典)は店の入り口で大きなバッグを拾った。中身を見たらの人間の生首だった。それを見て気を失い石化する店員。慌てて知らぬふりで店の入口へその石化店員を運び出す二人。呼び出した男(深浦佑太)は呼び出された男から何度も何度も多額の借金が累積していた。
二人の噛み合わない会話が滑稽だ。無理に噛み合わないように作っているのではなく、ごく自然に無作意に行き違うように見えるのが巧妙で面白い。実は呼び出された男の娘は呼び出した男の子どもで、その借金は、その子の育児費用だったというオチ、もしかしたらこの店員も一役買って石化の芝居をしたのかも知れない。

4、犬犬フアンタジー  脚本/山下カーリー 所要時間/15分
男3人と客席で待っていたもう一人(=足達泰雅・塚本雄介・三戸部大峰・山崎孝宏)は昔、東京で『犬犬バンド』をやっていたが解散してこの4人は故郷の札幌へ戻った。残ったソリスト(=梅津学)が札幌公演で来札したのを機会に再結成を画する。その経過とそれぞれ5人の心境。

5、半熟コンシェルジュ  脚本/遠藤雷太 所要時間/20分
観光ホテルのコンシェルジュ主任(=長麻美)は、昼休みに頼りになるバイト(=野村大)をこの喫茶店に呼び出して、その方法を聞きだそうとする。頭が良く機転の利くバイトは、昼休みにまで様々な難問が押し寄せる主任の電話に次々と要領よく解決をする。なぜこの男はバイトなのかが解明される。2話のマリッジブルーの女性が来て、彼はこの件も見事に捌く展開になる。

          ☆

一種の軽い風俗劇のオムニバスである。本物の喫茶店で上演したのは多分リアリティを強めたかったのだろうと思われるのだが、フライヤーでも前振りでも、観客にその喫茶店の客として演技をするということを求めて、喫茶店の本物の客であることを要求している。だが観客が本物の喫茶店で本物の客として着席しこのお芝居を本物だと感じるならば、何か本物の行動を起こして芝居は壊れるだろう。喫茶店はあくまでも舞台装置であり、客はあくまでも予約された定員だけの、この演劇の観客なのだ。
この舞台の演技者たちは店の客を装った俳優であり短編喜劇オムニバスなのだ。喫茶店の本物の客なのか観客なのか、その辺が中途半端で、僕ら演劇の観客はとても居心地が悪いのが最大の欠陥だった。