人の気も知らないで

観劇日時/15.4.26. 14:00~15:00
劇団名/ラボチプロデュース
公演形態/Re:Z
作・演出/横山拓也 舞台監督/高橋詳幸 照明/秋野良太
企画協力/三上敦 衣装協力/佐々木青 宣伝美術/本間いずみ
制作/(ラボチ)小室明子
劇場名/シアターZOO
出演/小島達子・田中佐保子・柴田知佳

60分の本音の会話

会社の同僚が右腕を失う大けがをした。見舞いに行った三人のOLは、その帰り道に、別の同僚の結婚式の二次会の余興の打ち合わせをするためにイートインに集まる。
大けがのショックと結婚式の余興というジレンマ。その話題の中で、三人それぞれの主張と、それぞれが怪我人の同僚と、結婚する同僚に対する思いの本音が徐々に語られる。 
その本音は一発触発だ。観ていてどうしてここでもっと突っ込まないのか中途半端だろうって思うシーンも散見した。
そこをどう乗り越えるのかが、この舞台の展開なんだろうって後で思う。とにかくそういう自己主張と相手の立場を思いやる際どいところで本音噴出の言葉の劇が成り立っている。
単なる会話劇のようだが、言葉の表現だけじゃなく、駆け引きの間やリアクションや表情などが実に細かで豊かでリアリティが強い。
最後が曖昧なのも現実の解決策として真実味がある。余興の打ち合わせを止めて一足早くに歯医者へ行く後輩、席を改めて拘っていたケーキを食べに行く男女関係に心残りの女、そして自分の身体にも決定的な欠陥を持つ3人の女性の心境それぞれ……
何も解決しないが1時間に亘って交わされた一見無駄なような会話は、連れだって去る二人の後ろ姿に何かを残して舞台は静かに暗くなる。
恐らく文字で読んだりラジオで聞いただけでは絶対に感じられない生身の人間の生きている現実の存在を確かに身近に感じた大きな時間であって、演劇の実態をこれほど強く感じたのは恐ろしいほどの新鮮な経験であった。
終演後の挨拶が無いのも現実のワンシーンとしてのリアリティーがある。