北極星の見つけかた

観劇日時/15.3.28. 18:30~19:40
上演団体/札幌琴似工業高校 定時制 演劇部

作/鷲頭環 スタッフ/鈴木和輝・押切光明
出演/三木夏恵・岩田司・岩本竜司・進藤莉奈・矢嶋紘平・大澤堯将
杉原悠生・吉田寛悌・福田兼大・引地学・塩田琴音・新井晃平

劇場名/ポルトホール

定時制高校生の現実の日々の中で

 定時制高校生の現実をリアルに描いた物語。登場人物も一人一人が当て書きだという。高校生といえども社会経験があるし現実に日中は働いて夕方から夜にかけて学校へ来るわけだ。
 実験が上手く出来なかった5人の生徒がトランジスター・ラジオの製作実習の宿題を課せられる。苦労するが中々出来ない。そこへ偶然、普通部・電気科の生徒が現れて協力する。彼は北極星の探し方を知っていて、皆に情熱を持ってそれを教える。彼にとってそれは唯一の希望だったのかもしれない。
 その中で印象的だったのは、右腕に麻痺があって実習に差し支える女生徒、それを知らずにたまたま宿題の応援に来て協力していた普通部・電気科の生徒が、その力の無さを指摘して滑り止めの布片を渡したとき、友人がそっとそれを注意したこと。
 家庭の事情で退学せざるを得なくなったその普通部の生徒が、誕生日と星座を聞かれたとき、9月31日だと言ったのだが、後でそれは暦に無い日だと知って、彼は自分の存在を消したかったのだと推察する。
 遂に彼は学校を去らなければならない辛い哀しい現実。校庭に停まった迎えに来た父親の車に向かう彼に5人と先生、そして偶然に通りかかった校務員の小父さんと7人で、窓から身を乗りだして北斗七星の形に懐中電灯を並べて、彼に向かって大声で声援を送って幕が閉まる。
 若々しく純粋だが冷たく厳しい現実、その中で暖かく生きてゆく彼らに声援を送りたくなる。これも一種の人生応援歌として演劇を道具に使ったのだが、とても暖かい心地の良い道具であった。