テッペンパレード   第二日目

観劇日時/15.3.20. 19:30~21:10

以下のデータは第一日目と同じ

演目1  117

原作・太宰治 
出演/小林エレキ

脚本/ミヤザキカツヒサ  演出/南参
出演/櫻井保一・びす子・浅葱康平

 これも初演で観て珍しい表現法が新鮮だった記憶がある。男の80年の生涯を、1年を10秒で象徴的な部分を演じて、時系列に沿わず、過去の10秒がとんでもなく行ったり来たりして目まぐるしい。うっかりすると混乱する。
 人生って時間に従って順序良く生きているのじゃなくて、過去の在る場面が現在に何らかの形で影響しているのかな、どこかとどこかは必然的に繋がっているのかなと思わせる。不思議な感覚だと思ったけど、考えてみれば、そんなものかもしれないと納得させられる。
 僕も今年80歳になって同じような妄想を抱いた。何故か80年がほぼ10年前後ごとに区切られるのだ。しかもその10年が一か月もないようなごく短い時間だったような気もするのだ。だから僕の一生はたった8カ月なのだ。その詳しい内容については別のエッセイに書いたのだが、この舞台を観て、そんな妄想を思い出したのだった。

演目2  ナンバー1

出演/能登英輔・上田龍成・棚田満・長流3平・小林エレキ

 ススキノのナンバーワン・キャパ嬢を選ぶバトル。ただそれだけの女装だけが面白い遊びのひと時。能登→上田→小林くらいまではまあまあ女装が似合っていて、これ誰だろう? って思えるけど、長流となるとちょっとおふざけだろうと思っていたら棚田が出てきてぶっ壊れた。まあ先の3人は実に良くも化けられる。さすが役者だ。

演目3  春よ来いマジで本当に死なないから

出演/櫻井保一・氏次啓・山崎孝宏・最上萌香・青木玖璃子・戸嶋智美・曽我夕子・
越智良知

 死なない先生のパターンは、これはこれで良く出来ていた。死なないと言うよりは死ねない先生、教え子たちが80歳になっても先生は相変わらず、あの歌に縋り付いているのが逆に切ない。別バージョンとして両立する2作品だと思う。そう思うと初演の審査員の否定論は逆に作品を成長させたと考えられ、逆手に取った南参の力技を賞賛する。

演目4  アゲハ

出演/曽我夕子・最上萌香・那智良知・城島イケル

 田舎のバス停。バスを待つ都会へ帰る女、彼女は女優業に敗れて一時の気分転換に故郷へ来たのだ。不安と希望の彼女を見送りに来た幼馴染みで田舎に住む夫婦。
事故でバスは不通となる。延泊を勧める夫。鉄道の駅まで歩くことを勧める妻。歩き出す女。女の後姿に飛び交う一羽のアゲハ蝶。
 微妙な三角関係を表現した心理劇……二人乗りの車で夫が駅まで送るのに微妙な気配を感じた妻は、やがて産まれる子供の為に新しい4人乗りの車に買い替えることを提案する。アゲハに身籠る我が子を感じたのだろうか?

演目5  ラッキー・アンハッピー

出演/能登英輔・戸嶋智美・小林エレキ・南参・櫻井保一・曽我夕子・最上萌香・
那智良知・光耀萌希・国門綾花・森高麻由・黒沼陽子

 障碍者が生きる意味を訴えるために演劇を道具に使った一種の啓蒙劇。僕はこういう演劇の在り方を否定しない。しかもこの劇は全く説教臭が無く、エンターテインメント一色だ。それも如何にものエンターテインメントではなく、全力疾走の展開やエネネルギッシュな集団ダンスなど圧倒的な魅力に溢れている。
 13年8月の同じ短編演劇祭で優勝した作品である。その時に感じたのは、この優勝作品と二位の作品の評価点が観客と審査員では全く逆転している矛盾だった。
 この作品の観客評価点は185点に対し審査員は10点、比べて二位の作品は観客94点vs審査員40点なのだ。審査員なんて当てにならないとつくづく思ったのを思い出した。もっとも観客点の総数は359点に対し審査員の総数は90点ではあるのだが。


 以上10作品、いずれもエネルギッシュでパワー満開の痛烈な作品群である。ほとんどが既成の作品だが、こんなに多数の出演者を揃えて、札幌演劇界の力を見せつけてくれて快哉を叫びたい思いだった。