メデュゥサが死んだ

観劇日時/15.3.6. 19:30~21:10 
劇団名/劇団怪獣無法地帯

作・演出/棚田満 照明/樋口優里 
舞台美術/濱道俊介 舞台監督/濱道俊介
音響操作/森みゆき 照明操作/芋田桃子 
制作/伊藤しょうこ・吉川直毅
宣伝美術/中村犬蔵

劇場名/琴似パトス

生身の役者が演じるライブの魅力

 「メデュウサ」とは何か? ギリシャ神話の蛇の精で邪悪とされた悲運の女性らしいが……それと、この話がどう繋がるのか? おそらく劇画に関連するんだろうが、それが分からないのが僕の弱いところだ。
 典型的な社会派刑事ドラマ。僕は、TVドラマは予定調和だから一切観ないが、前説で作者本人が言っている通り、これは正真正銘のTV式正義派ドラマなのだろう。
 話の筋は単純だ。日本における三大製薬会社の一つである某製薬会社の会長が誘拐され身代金が要求される。家族の恐怖と不安。警察が組織を上げて追求する。
 だんだん分かってくると、この製薬会社がかつて田舎に建設した製薬工場の廃液による健康被害を受けたその土地の出身者である若者たちが、工場の責任を暴くために起こした事件だということが分かる。
 だが被害者の会長は、すでにその地で戦前に操業していた毒薬兵器の廃液によって自分の工場が汚染されていたが、国はその国策兵器工場の非を認めなかったから自分の工場は撤退したのだという。
 結局、双方に非がなかったことを知った警察は脱力する。この話の展開に会長と誘拐グループのリーダーとの血の繋がりの悲劇が露わになったり、現金受け渡しの現場がオペラハウスだから、この今日の上演している実際の客席がオペラハウスの客席に見立てられ、金を運ぶ家族たちが客席に座って臨場感を強めたり、女性刑事が一味だったり主任刑事の夫婦愛が見えたり壷にはまって実際に面白い。
 これがTVドラマだったら定石通りで退屈だろうなと思うと、ライブドラマの魅力っていったい何だろうなと身内贔屓の感覚なのかなと不思議な気分を感じるのだ。
 椅子以外には何もない裸舞台に、次々といろんなシーンが出てくるのだが、ラストに仕事を終えた捜査班長が疲れて帰宅したら、妻が「ちょうど記念日だから仕事のねぎらいを兼ねてお食事に行きましよう」と誘う。妻はたったそれだけせいぜい2・3分だけの出演なのだが、この舞台のラストを締める印象に残る姿だったのだ。

出演者
特殊捜査課柏木班長/梅津学  臼渡刑事/澤村和明  黒川刑事/長流三平 
泉刑事/吉川直毅  真下婦警/新井田琴江
国立薬品桐原会長/松橋勝巳  夫人/伊藤しょうこ 
長男・社長/塚本雄介  長女・役員/長谷川碧  家政婦/シチュー山本
本庁藤森班長/柳瀬泰二  宮田刑事/熊﨑嵩郎  小沢刑事/足達泰雅 
古谷管理官/MARU
オペラ公演スタッフ/忠海勇・高井ヒロシ・小林健輔  観客/MARU・山口萌
国立製薬課長/高井ヒロシ  受付嬢/山口萌  チケット販売会社担当/小林健輔
かっぱらい犯/足達泰雅  ホームレス/熊﨑嵩郎  水商売の女/山口萌
柏木班長の妻/原田充子   松井正/前田透