さくら色オカンの嫁入り

観劇日時/15.2.25. 13:30~15:50(途中休憩15分)
製作/シーエイティブプロデュース
上演形態/旭川市民劇場2月例会

原作/咲乃月音 脚本/赤澤ムック 演出/西川信廣
音楽/八幡茂 美術/中村公一 
照明/吉川ひろ子 音響/高橋巌
演出助手/道場禎一
ヘアメイク/川端富生 衣装/村上由美
舞台監督/清水浩志 舞台製作/加賀谷吉之輔
宣伝美術/菅原麻衣子 宣伝写真/引地信彦
制作/清水光砂・内山寛郎・渡辺葵
プロヂューサー/江口剛史

劇場名/旭川公会堂

ハッピィでないハッピィエンド

 妊娠中に夫を亡くした陽子(=熊谷真実)と、そのために父親を知らないで育った娘の月子(=荘田由紀)は、たった二人だけの家族、だが老人施設で働く陽子は、祖父(=島田順二)の介護に来ていた研二(=佐藤アツヒロ)と知り合った。
 そして母子の健気さを気に入った資産家の未亡人・サク婆(=正司花江)は亡くした自分の娘の為に増築してあった豪華な部屋をこの母子に貸して、まるで三代の女家族のように暮らしていた。そしてハチ(=溝口琢矢)という捨て犬までも交えて……
若い月子は働いていたがある時、善意で地方出身の男性を歓待したところ勘違いした男がストーカになり、月子に大けがをさせる。心に傷を負った月子は外出恐怖症となり、ハチを相手に引きこもる。
 そういう話は劇が展開する中で徐々に分かってくるのだが、いきなりある日の深夜に陽子が泥酔して変な若い男・研二を連れ帰って結婚すると宣言するところから開幕、月子、サク婆、そしてハチは大混乱に陥るのだ。
 軽薄でチャライ研二は、本当は堅物の調理師である祖父に育てられ認められた誠実で心優しい一人前の板前なのだ。母娘の家庭に入り込んだその研二の暖かい料理と、研二の語る祖父との関係に月子は次第に心の健康を取り戻して行く。
 やがて陽子は白無垢の衣装で挙式をしたいと思い、衣装合わせに月子に着いて来て欲しいと頼む。陽子はこれを機に月子に立ち直って欲しい。研二の献身的な支えで立ち直りつつあった月子は3人一緒で1年ぶりに電車で出掛けることになる。
 その衣装合わせで着飾った陽子は突然、倒れる。陽子は末期のガン患者だったのだ。月子はなぜ隠していたのか恨む。陽子は幸せを失くしたくなかったからだと告白する。
全てを知った月子は逆境を前向きに生きて行くことを自覚する。研二は、短い陽子の人生に最後まで一緒に生きることを誓う。
 現実はアンハッピィだが、愛と優しさとで乗り越えて強く生きてゆく人たちの未来のハッピィを予感させる物語だ。
 熊谷真実や正司花江の人気タレントたちの個人的内幕のギャグや、人間が演じる犬の演技など満場爆笑、笑わせ、考えさせ、泣かせる典型的な人情喜劇の中に、死に直面する覚悟までを示唆するピリッとした辛さをも持った舞台であった。
 それは研二の想い出の中に現れる亡霊の祖父との暖かく厳しい信頼関係の中でも良く現れてくる。

 その他に、祖父を騙して店を奪い取る街金屋(=宮澤寿)が出演。この街金屋は研二の親友なのだが、祖父はあくまでも研二を信頼していたのだった。