蟹と彼女と隣の日本人

観劇日時/15.2.12. 14:00~15:20
劇団名/札幌座

作・演出・音楽/斎藤歩 照明プラン/熊倉英記
音響プラン・舞台美術デザイン/斎藤歩
演出助手/宮田圭子・木村洋次
照明・音響オペレーター・舞台監督・衣装/札幌座
翻訳・字幕/木村典子
制作/松本智彦・横山勝俊 ディレクター/斎藤歩
プロデューサー/平田修二・木村典子
金管楽器演奏/岩見沢教育大学学生3名

劇場名/シアターZOO

日韓関係の本質的なあり方を提示する

 初演は、日韓の友好を推し進める一種のプロパガンダ的な演劇のような印象が強くて、それほどの深い感じはしなかった。それに対して今回は、共存という意味の本質を掘り下げようとする意図を感じる。
 ラストで、取り残された韓国人の若い男女が母国語で交わす会話の中に、それがあり、見方によっては、その会話が教訓的にも聞こえるのだが、実はその会話が、この劇を通して演じられるマンガチックな大騒動の結果を引き受けて説得力があるのだ。
この女性・スジョンを日本古典文学の研究生に設定し男性・ソングを山師っぽいアルバイトにしたことが何かを象徴しているのだろうか?
 ラスト・シーンは、二人残ったスジョン(=趙アラ)がソング(=鄭然駿)に「(要約)朝起きたら隣に何を考えているのか分からない目障りな他人が我が物顔に横たわっている。得体の知れない他人と隣り合わせに生きて行くしかない。お互いのことを認め合ったり、許し合ったり、何か自分の事は諦めたりして、もうしようがなく寄り添って生きて行く。夫婦は分かれることが出来るけど、日本も韓国も隣人であることはやめられない。」と話すのだが、これはあくまでも台詞で語られているだけなのだ。
          ☆
 シーンの変わり目の暗転ごとに流れる管楽器の演奏が、まるでわらべ歌のように暖かく懐かしく癒される。