デイヴィッド・コパフィールド

観劇日時/15.1.18. 14:00~16:10
劇団名/札幌座

原作/C・ディケンズ 翻訳/中野好夫 構成・演出/清水友陽
音楽/斎藤歩 照明/清水洋和 演出助手/佐藤健一
音響プラン/斎藤歩 音響オペレーター・衣装スタッフ/札幌座
舞台監督/渡辺淳一 舞台美術デザイン/中川有子
制作/松本智彦・横山勝俊 ディレクター/斎藤歩
プロデューサー/平田修二・木村典子

劇場名/新札幌 サンピアザ劇場

出演者/すがの公・弦巻啓太・木村洋次・ 佐藤健一・宮田圭子・
林千賀子・山本菜穂・ 高子未来・山野久治・
小島達子・ 信山E紘希・石川哲也・田中春彦・
由村鯨太・ 成田愛花・坂本優美花・堀田結・市川薫

全体を分解して幾つかの独立したドラマを連作で創ったら?

 イギリス19世紀の大作家・ディケンズの自伝とも言われている長編小説の劇化である。もちろん作家本人の事実の記録ではなく事実を基にしてフイクションをまぶした大河ドラマという形の物語だ。
 だから当然、期間も長く主人公の生誕から成長した、おそらく40歳くらいまでの長い時間の中での物語だし、その期間に彼に何らかの形で関わった大勢の人物が出没する煩雑で入り組んだ壮大な展開である。
 時代背景や当時の社会の歴史の予備知識がないと分かりづらいのが正直なところだ。だがその事情を抜きにしてもこの少年が辛い現実の中で生き抜いていく成長物語としても訴える力は確かに強い。
 だが何せ話はどんどん飛んで行くし、舞台装置は目まぐるしく変化するし、登場人物は次々と現れるし、観ている方は着いていかれない。しかも人物は同じ役者が次の場面では違う役柄の人物を演じて居るから混乱する。一人の役者が何役をも演じているのだ。しかも舞台装置の転換も劇の進行の中で役者たちが作業する。同じ演出者の『クリスマス・キャロル』の時は、それが上手くいって、映画的なシーンの転換の絶妙な面白さを味あわせてくれたが、今回はちょっと煩雑な感じがした。
 19世紀の激しく変化するイギリス社会の中で生きて行く人生を多面的に描写した力技は凄いし、そういう社会状況の中で、つまり強者と弱者との格差の激しい中で生きる弱者の意志は現代に通じるし、さらに現代はその格差がさらに強くなっていることを痛感する。 
けれどもそれはそれとして、この舞台はどうしても演劇としては拡散され過ぎてインパクトは弱いと思わざるを得ないのだ。
 だからむしろ、このたくさんの場面の中から重要な一つ一つの要素を抽出して幾つかの物語をそれぞれに独立させて、それらの連作シリーズの舞台を創ったら面白いのじゃないのかと思った。
 それぞれの単発の物語にはそれぞれのテーマがあり、その上で全体にも通貫した大きなテーマがあるというような、それこそ連作大河ドラマという壮大な企画が出来るのじゃないだろうか……
 何だかそういう想像をして逆に期待が大きく膨らんだのだった……